パートナー管理

PRMとは?パートナー管理ツールの基本と導入メリット/デメリットをわかりやすく解説

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PRM(パートナー関係管理)の全体像を示した概念図

「パートナーセールスを始めたものの、パートナー企業との情報共有がメールや電話でバラバラになっている」「案件の進捗が見えず、パートナーごとの成果も把握できない」――そんな悩みを抱えている企業が増えています。こうした課題を解決する仕組みとして注目されているのが、PRM(Partner Relationship Management)と呼ばれるパートナー管理ツールです。

本記事では、PRMの基本概念から導入メリット、そして知っておくべきデメリット・限界までをわかりやすく解説します。間接販売チャネルを本気で伸ばしたい方は、ぜひ参考にしてください。

PRMとは何か?

PRM(Partner Relationship Management)とは、販売代理店・紹介パートナー・リセラーなど、間接販売チャネルを担うパートナー企業との関係を一元管理する仕組み、またはそれを実現するためのツールの総称です。

自社の直販営業を管理するSFAや、顧客との関係を管理するCRMと並んで、「パートナーとの関係」に特化したシステムがPRMであると言えます。

PRMの主な機能

PRMが提供する機能は製品によって異なりますが、共通して見られるものは以下のとおりです。

  • パートナーポータル:パートナー企業が自社専用の画面にログインし、資料・案件情報・営業支援コンテンツを確認できる場所
  • 案件登録・進捗管理(ディールレジストレーション):パートナーが持ち込んだ案件を登録し、ベンダーと共有・追跡する機能
  • コンテンツ管理:提案資料・製品情報・価格表などをパートナーに配信する機能
  • チャット機能:パートナー担当者との連絡・通知・ナレッジ共有
  • 実績・インセンティブ管理:パートナーごとの成果を集計し、手数料計算やキャンペーン管理に活用
  • オンボーディング機能:新規パートナーの立ち上げを支援する学習/教育コンテンツやチェックリスト

SFA/CRMとの違い

SFA・CRM・PRMは似ているようで、対象と目的が明確に異なります。

  • SFA(Sales Force Automation):自社の直販営業担当者の活動を管理するためのツール
  • CRM(Customer Relationship Management):自社とエンドユーザー(顧客)との関係を管理するためのツール
  • PRM(Partner Relationship Management):自社とパートナー企業との関係、およびパートナー経由の案件・顧客を管理するためのツール

SFAやCRMはあくまで「自社の営業担当者・顧客」を管理対象としているため、間接販売を行うと情報が抜け落ちたり、パートナー企業を無理やり”営業担当者”として登録してムリが出る、ということが起きがちです。PRMはこの隙間を埋める存在だと理解すると分かりやすいでしょう。

SFA・CRM・PRMの違い

なぜ今PRMが注目されているのか

PRMは海外では10年以上前から市場が存在するジャンルですが、日本国内で注目されるようになったのはここ数年のことです。その背景には、いくつかの環境変化があります。

SaaS市場の成熟とパートナービジネスの再評価

直販中心で伸びてきたSaaS企業が、PMFを超えて次の成長フェーズに入ったとき、多くの企業が「直販の限界」に突き当たります。営業人員の採用は時間もコストもかかり、業界・地域・企業規模ごとのカバレッジを直販だけで広げるのは現実的ではありません。そこでパートナービジネスを本格化させる企業が増えており、その土台として管理インフラの整備が求められるようになりました。

属人化の限界

パートナー企業が数社のうちは、メール・Slack・スプレッドシートで何とか回せます。しかし10社、30社、50社と増えてくると、情報が担当者のPCや受信箱に散在し、担当替えのたびに引き継ぎが崩れるという問題が起きます。PRMはこの属人化を解消する仕組みとして位置づけられています。

日本のパートナービジネスの難しさ

PRMで解決できる5つの課題

PRMを導入することで、パートナーセールス運営にありがちな以下の課題を解決できます。

課題1:パートナーとの情報共有が属人化する

資料や案内をメール添付・個別チャットで送っていると、どのパートナーにどのバージョンを送ったか分からなくなり、古い資料が一人歩きするリスクがあります。PRMのポータルに最新資料を置いておけば、常に最新版をパートナー自身が取りに来られる状態になります。

課題2:案件の進捗がブラックボックス化する

パートナーが持っている案件の状況を、ベンダー側が把握できない――これはパートナーセールスで最も多い悩みの一つです。月1の定例ミーティングで口頭確認するような運用では、支援のタイミングを逃してしまいます。ディールレジストレーション機能で案件を登録・共有できれば、プロセスに応じた適切な支援が可能になります。

課題3:パートナーごとの成果が見えない

「このパートナーにどれだけ投資してリターンがいくらか」というROIが見えないと、リソース配分の判断ができません。PRMなら、商談数・受注数・受注金額をパートナー単位で集計できるため、どこを重点支援し、どこを育成フェーズから外すかの意思決定ができます。

課題4:オンボーディングが非効率

PRMのオンボーディング機能を使い、学習コンテンツをテンプレート化し、進捗も可視化できるため、立ち上げ工数を大幅に削減できます。

課題5:コミュニケーションがあちこちに分散する

メール・Teams・Slack・電話・対面――パートナーとのやりとりが複数のチャネルに散らばると、履歴を追うのも一苦労です。PRMに活動履歴が集約されていれば、担当変更時の引き継ぎも、会話のコンテキスト共有も、圧倒的にスムーズになります。

PRMで解決できる5つの課題

PRM導入のメリット

PRM導入のメリットは、ベンダー側だけでなくパートナー側にも及びます。それぞれを整理しておきましょう。

ベンダー側のメリット

  • パートナーセールスチームの生産性が上がる(定型業務の削減)
  • 案件・実績のデータが蓄積し、KPI管理・施策の振り返りができる
  • 新人パートナーセールスの立ち上がりが早くなる(ナレッジの資産化)
  • 経営層・関係部署への報告が容易になる(データがワンクリックで出せる)
  • パートナー1社あたりの成果を高められる(深掘り型の運用)

パートナー側のメリット

  • 必要な情報・資料にいつでもアクセスできる
  • 商談の進捗を自社内でも共有しやすくなる
  • ベンダーからの支援・問い合わせ対応が速くなる

上述のようなメリットがある一方で、PRMは「ベンダーが管理するための道具」という側面が強く、パートナー側がログインするメリットが薄いため、「パートナーがログインしたくなるツール・使いたくなるツール」という状態にどのように持っていくかがPRM運用の成功の鍵を握ります。

 

PRM導入のデメリット・知っておくべき限界

ここまでメリット中心に紹介してきましたが、PRMの導入には事前に理解しておくべき落とし穴もあります。

パートナーセールス研究会に入っていただいている企業の中にも、PRMを導入している企業は一定数いますが運用状況をヒアリングしてみると、実に約8割〜9割ほどの企業でうまく運用ができていない・効果が出ていないというのが日本のパートナービジネスにおける実態となっています。

PRM導入企業の実態を何十社にもヒアリングしていった結果、「導入したのに成果につながらない」というケースには共通のパターンがあることがわかりました。

PRMにパートナーがログインしてくれない問題

 

デメリット1:「空き箱」問題――誰もログインしない

最も多い失敗が、導入したPRMが”空き箱”になることです。ポータルを用意したのに、パートナー側の担当者がログインしない。ログイン頻度が月1回を下回り、コンテンツ閲覧履歴はほぼゼロ、案件情報も蓄積されない――気づけば高額なライセンスだけが毎月更新されている、という状態に陥ります。

なぜログインされないのか。理由は主に3つです。

  • パートナー側がログインで得られるのは「ベンダー都合の情報」が中心で、自分の案件が進むわけではない
  • パートナー企業は日常的に何十ものツールを扱っており、ベンダーごとの専用ポータルを開く余白が残っていない。また、PRMのサービスが増えるほど、「A社製品はPRMのZ社にログイン」「B社製品はPRMのY社にログイン」といった具合にログインする先のPRMが分かれるため、パートナー側からするとかなり面倒です
  • 情報を入力するほどベンダー側が得をする非対称な負担構造になっており、継続的な動機が生まれにくい
空き箱化したPRMのイメージ

デメリット2:「双方ログイン前提」という幻想

多くのPRMは、「ベンダー側もパートナー側も両方がログインしてデータを入力・共有する」ことを前提に設計されています。しかし現実には、パートナー側がそこまでツールに関わってくれるという前提は、日本市場では成立しにくいのが実態です。「PRMを導入する」という意思決定の前に、この前提条件が自社・自社のパートナーに当てはまるかは、正直に確認しておく必要があります。

デメリット3:導入・運用コストが思ったより重い

海外PRMを中心に、ライセンス費用・初期構築費・カスタマイズ費が高額になるケースがあります。専任の運用担当者を置いても、使いこなしまでに6ヶ月〜1年かかることも珍しくありません。「本体価格以外の見えないコスト」(運用工数、研修、社内調整、コンテンツ整備など)を事前に見積もっておくべきです。

デメリット4:見えるのは「結果」だけ、商談以前の関係性は可視化されない

PRMに記録されるのは、案件登録・商談・受注といったすでに商談化した結果のデータが中心です。一方、パートナーセールスの本質である商談以前の関係性――日々のやりとりの温度感、接触頻度、沈黙日数、キーマンの異動、社内での動きなど――は、Slack・メール・Chatwork・対面のやりとりに散らばったまま取り残されます。

仮に、PRM内のチャット機能でパートナー側がコミュニケーションを取ってくれるのであれば、コミュニケーションデータや関係値のデータは蓄積されるでしょう。しかし、日本のパートナービジネスにおいて「パートナー側が望むコミュニケーションツールに合わせる」が鉄則であるため、PRM内のチャット機能をわざわざ使ってくれるパートナーはほぼいないというのが実態です。

この「見えていない部分」にこそ、次に売上が伸びるパートナー、離れていきそうなパートナーのサインが潜んでいる、というのが現場感覚です。結果だけが並ぶダッシュボードは、あくまで「過去の可視化」であって、未来の打ち手を導くものにはなりにくい、という限界があります。

デメリット5:キーマンが見えない

既存PRMの多くは「ポータルへのログイン数」「案件の登録数」「eラーニングの受講数」などを元に、キーマンを特定していきます。しかしながら、これはPRMにログインされるという前提が成り立つことが前提であり、PRMにログインがされなければキーマンを特定することができません。

本来は、キーマンを特定するためのコンタクト単位・個人単位で熟成度を追える仕組みが必要ですが、これをPRMだけで実現するのは難しいのが現状です。

デメリット6:人間の処理限界を超えるシグナル量

仮にパートナーが100社あり、それぞれ1日10シグナル(メール/会議/チャット投稿など)発生するとすると、1日あたり1,000シグナル。これを人間が毎週・毎月レビューして全体像を把握するのは不可能で、結局は上位10社の「着地感触」だけで経営報告が行われることが大半です。変化に気づくのは翌月のレビューか、最悪の場合は契約解消の申し入れが来たとき――こうした事態は、ダッシュボードを増やすだけでは防ぎきれません。

デメリットを踏まえた新しい潮流:PRIという考え方

こうしたPRMの限界を踏まえ、日本のパートナービジネスにローカライズした新たな概念であるPRI(Partner Relationship Intelligence)という新しいカテゴリが広がり始めています。PRIは、パートナー側のログインを前提とせず、既存のメール・チャットツールなどに蓄積されている活動データから自動的に関係性を可視化するという新たな発想のアプローチです。

「PRMを入れたのに活きていない」という状況に心当たりがある方、あるいは「パートナー側に新しいツールを使わせるのは現実的ではない」「パートナー側のオペレーション工数を増やしたくない」と感じている方は、PRIという新たな概念も一緒に押さえておくとよいでしょう。本メディアを運営する株式会社synergeeeは、PRIという立ち位置で新しいプロダクトの提供を進めています。

まとめ:PRMは万能ではない―PRIという新たなカテゴリの創出

PRM導入が向いている企業PRMとは、パートナー企業との関係を一元管理するための仕組み/ツールです。SFA・CRMが直販営業と顧客のための基盤であるように、PRMはパートナーセールスのための基盤になります。

一方で、「空き箱化」「双方ログイン前提の崩れ」「商談以前の関係性が見えない」といった限界もあり、これを解消する次の潮流としてPRI(Partner Relationship Intelligence)という日本のパートナービジネスにローカライズした新たな概念が広がり始めています。メリットだけでなくデメリットや構造的限界まで理解したうえで、自社のフェーズと課題にあわせて今自社に必要なのはPRIなのか?それともPRMなのか?段階的に運用と仕組みを整えていくことが重要です。

パートナーセールスの「次」を、はじめます。──日本のパートナーセールス・エコシステム構築という構想

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