パートナーセールス研究会 発起人の葛西(@kasai_201406)です。
本日は、最近ご質問をいただくことが増えた「PRI」について、定義からPRMとの違いまでまとめて書かせていただきます。
PRIとは
PRI(Partner Relationship Intelligence/パートナー・リレーションシップ・インテリジェンス)とは、パートナーにログインや入力を求めずに、メーカー側でパートナーとの関係と活動を把握し、次の打ち手につなげる考え方です。
ポイントは3つです。
- パートナーは何もしない:ポータルへのログインも、案件の登録も求めません。故にパートナー側には一切工数がかかりませんのでストレスフリーです
- 日常のやりとりから自動で記録する:Slack・Chatwork・Teams・メールなど、すでにパートナーと使っている連絡手段から活動を集めます
- 「商談前」を見る:商談になる前の、関係づくりや情報交換の段階を把握の対象にします
PRM(Partner Relationship Management)が「パートナーを管理する場所」だとすれば、PRIは「パートナーとの関係から成果への道筋を読み取る仕組み」です。
PRMとPRIの違い
| PRM(従来型) | PRI | |
|---|---|---|
| 正式名称 | Partner Relationship Management | Partner Relationship Intelligence |
| 考え方 | パートナーを管理する「場所」 | 関係から打ち手を導く「知性」 |
| パートナーの作業 | PRMにログインし、作業する | なし |
| データの集め方 | パートナーとメーカーの手入力 | 日常のやりとりから自動で集める |
| 主に見える範囲 | パートナーの基本情報と商談になった後の情報 ポータルからのログイン数・DL数 eラーニングの受講状況 |
商談になる前の活動情報や施策情報 パートナー企業ごとの深耕度・関係性の変化 パートナー側の営業担当別のフェーズ情報 |
| CRM・SFAとの関係 | 商談管理が二重管理となりやすい | 商談の手前を受け持ち、商談後はCRM・SFAに任せる |
| つまずきやすい点 | パートナーがログインせず、データがたまらない | 取り込むやりとりの範囲を決める必要がある |
PRMそのものについては、PRMとは?パートナー管理ツールの基本と導入の向き・不向きで詳しく解説しています。
なぜPRIという考え方が生まれたのか

PRMは、パートナーにログインしてもらう前提で作られている
PRMの多くは、パートナーにポータルへログインしてもらい、案件を登録し、資料を見てもらうことを前提に設計されています。
ところが、パートナーセールス研究会や個別のヒアリングで現場の方々からお聞きすると、この前提がそもそも成り立っていない例が非常に多いのです。
当社がパートナーセールスの実務家・責任者の方々に行ってきたヒアリング(2023〜2026年、約200〜300社)では、次のような実例をお聞きしました。
- あるSaaS企業がポータルを23社に案内したところ、実際に登録したパートナーは0社
- アカウントを30名に付与して、実際にログインしたのは2名
- パートナーの販売会社に付与したデモアカウントの利用時間が、全社合計で月240分
企業名は伏せていますが、いずれも各社から実際にお聞きした数字です。海外製・国産を問わず、自社で構築したパートナーポータルでも同じことが起きていました。
ログインしないのは、パートナーの怠慢ではない
これは運用の工夫が足りないから起きるのではなく、構造の問題です。
- パートナーにとって、1社の商材は数百分の1:パートナーの営業担当者は多くの商材を扱っています。1社のためにポータルを開いて入力するのは、パートナー自身の仕事ではなく「メーカーのための作業」です
- 提携メーカーの数だけ、ログイン先が増える:10社と組めば下手すれば10画面です。「メーカーによってログイン方法が違う」という声は、ヒアリングでも繰り返し出ています
- パートナー側のセキュリティの問題:パートナー側のセキュリティの問題で、そもそも外部のポータルや外部リンクにクリックできないというケースがある(例:地方銀行等)
- 日本では、パートナーの方が立場が強いことが多い:顧客との接点を持っているのはパートナーです。メーカーは「売ってほしい」とお願いする側にいます
この構造についてはPRMにパートナーがログインしてくれない問題でも詳しく書いています。
勝負を決める「商談前」が、どこにも残らない
もう1つの問題は、PRMが管理している範囲です。
従来型のPRMで実際に管理されているのは、パートナーの基本情報と商談の2つが中心です。前者はExcelの台帳をシステムに移したものに近く、後者はSalesforceやHubSpotの商談管理と重なります。
一方で、パートナーセールスの成果を左右するのは、その手前です。
- パートナーの担当者と、どれくらいの頻度でやりとりしているか
- 勉強会や同行のあと、相手の反応はどう変わったか
- しばらく連絡がない「休眠」状態のパートナーはどこか
こうした商談前の活動は、ポータルにもCRMにも残りません。担当者の頭の中と、チャットやメールの履歴に散らばったままです。
ヒアリングでは「代理店契約は220社あるが、実際に動いているのは40社」「契約30社のうち稼働は5社」といった声もお聞きしました。動いていない多数のパートナーが、なぜ動かないのかが見えない。これがPRIの出発点です。
PRIでできること

PRIの考え方に沿うと、パートナー管理は次のように変わります。
1. パートナーの作業はゼロのまま、記録がたまる
すでにパートナーとやりとりしているSlack・Chatwork・Teams・メールをつなぐだけで、活動の記録が自動で蓄積されます。パートナーに新しいツールを覚えてもらう必要はありません。
2. 「誰が動いているか」が数字で見える
やりとりの頻度や深さから、パートナー企業ごと・担当者ごとの活動量を把握できます。感覚で「あそこは最近動いている気がする」と言っていたものが、比較できる数字になります。
3. 放置パートナーや休眠エースに早く気づける
以前はよく紹介してくれていたのに、最近連絡が減っているパートナー。契約したまま一度も動いていないパートナー。こうした変化に、売上が落ちる前に気づけます。
4. 担当者が替わっても、関係が引き継がれる
パートナーとの関係は、担当者個人に強く結びつきがちです。やりとりの履歴が組織に残っていれば、異動や退職があっても関係をゼロからやり直さずに済みます。
CRM・SFAとの関係
PRIは、SalesforceやHubSpotなどのCRM・SFAを置き換えるものではありません。
| 段階 | 担当 |
|---|---|
| パートナー契約 → 関係づくり → 勉強会・同行 → 案件の紹介 | PRI(商談の手前) |
| 商談 → 受注 → 契約管理 | CRM・SFA(商談の後) |
商談になるまでをPRIで、商談になった後をCRM・SFAで見る、という分担です。役割が分かれているので、同じ情報を二重に入力する必要はありません。
PRIが向いている会社・向いていない会社
向いている会社
- パートナー(代理店・販売会社・紹介パートナー)が10社以上あり、全社の状況・パートナー各社の営業担当のステータスを把握しきれていない
- PRMやポータルを入れたが、パートナーにログインしてもらえず、情報が何も溜まらなかった
- パートナーとのやりとりがSlack・Chatwork・Teams・メールなどに分散している
- 契約しているパートナー数に比べて、実際に動いているパートナーが少ない
- パートナー担当者の異動・退職で、関係が途切れた経験がある
向いていない会社
- パートナーが数社で、担当者がパートナー側の営業全員のステータスを把握できている
- パートナー側が自発的にポータルを使う関係がすでにできている(海外の大手ベンダーに多い形です)
- パートナー制度をこれから作る段階で、まだやりとりそのものが少ない
パートナー制度をこれから始める方は、先にパートナー制度の開始前に実施すべき自社分析の方法をご覧ください。
よくある質問
PRIはPRMの一種ですか?
PRMと同じく「パートナーとの関係を扱う」点は共通していますが、前提が異なります。PRMはパートナーにログインと入力をしてもらう前提、PRIはパートナーに何もさせない前提で設計されています。そのため、別のカテゴリとして扱っています。
PRIを入れると、パートナーに何かお願いする必要はありますか?
ありません。パートナーとは、これまでどおりSlack・Chatwork・Teams・メールでやりとりを続けていただくだけです。
パートナーとのやりとりを取り込むのは、セキュリティ上問題ありませんか?
取り込む範囲は、メーカー側が明示的に指定したチャンネルやメールに限るのが前提です。どのやりとりを対象にするかは、導入時に社内で決めておく必要があります。
PRIという言葉は誰が使い始めたのですか?
PRIは、パートナーセールス研究会の運営会社である株式会社synergeeeが、研究会で集まった現場の声をもとに提唱しているカテゴリ名です。
PRIを入れれば、パートナーは動くようになりますか?
PRIそのものは、パートナーの状況を見えるようにする仕組みです。見えた結果をもとに、どのパートナーに、いつ、何をするかを決めて実行するのは、パートナーセールス担当者の仕事です。何を指標にすべきかはパートナーセールスのKPI設計 完全ガイドも参考にしてください。
まとめ
- PRI(Partner Relationship Intelligence)とは、パートナーにログインや入力をさせずに、パートナーとの関係と活動を把握する考え方です
- PRMは「パートナーにログインしてもらう」前提で作られており、日本のパートナービジネスではその前提が成り立ちにくい
- PRIは日常のやりとりから記録を集め、勝負を決める「商談前」を見えるようにする
- CRM・SFAとは競合せず、商談の手前をPRI、商談の後をCRM・SFAが受け持つ
「パートナーにどう使ってもらうか」ではなく、「パートナーに何もさせずに、どう把握するか」。PRIは、この発想の転換から生まれた考え方です。
言い換えれば、PRMを日本のパートナービジネス市場に合わせてローカライズしたもの、これがPRIです。
従来のPRMは海外のパートナービジネス市場をベースに開発されており、「ベンダー(メーカー)>パートナー」のパワーバランスのもとで開発されているシステムです。この日本のパートナービジネス市場においては大半のケースで「ベンダー(メーカー)<パートナー」のパワーバランスとなっている中で、海外のパートナービジネス市場をベースに開発されたPRMが日本のパートナービジネスの課題を解消すると思いますか…?
私の前職のビズリーチも海外市場で伸びていたLinkedinをモデルにサービスを立ち上げ、ローカライズしたからこそ成功しています。その他にも海外市場で流行っているサービスを日本市場にローカライズして伸びている会社はいくつもあります。
パートナービジネスにおいても日本市場へのローカライズは必須なのではないでしょうか・・・?
日本市場でパートナービジネスに携わる皆様の参考になれば幸いです。
パートナーセールス研究会では、パートナーセールスに関する実践知やノウハウを発信しています。最新のイベント情報やコンテンツは、X(@kasai_201406)でもお知らせしていますので、ぜひフォローしてください。