パートナーセールス研究会 発起人の葛西です。
これまで当メディアでは、パートナー企業・担当者の情報管理の重要性や、その情報を可視化するツールとしての「パートナーカルテ(パートナープロファイル)」について、複数の記事で触れてきました。
一方で、研究会のメンバーの方やご相談いただく企業さんとお話ししていると、こんな声をよく耳にします。
- 「上司に言われてパートナーへヒアリングを行ったが、その情報の入力が続かない」
- 「項目は埋めているが、正直何に使うのかわかっていない」
- 「作ったきり、商談前に見返したことがない」
パートナーカルテ(パートナープロファイル)は「入力すること」自体が目的ではなく、明確な使い道があって初めて成果につながるツールです。
パートナーの解像度を上げることは、パートナーセールスの一丁目一番地であり、パートナー企業に所属する営業担当の皆様よりも詳しくなっていることが理想です。
にも関わらず、パートナーのことを調べ尽くして、パートナーのことを細部まで理解しているパートナーセールス担当者が本当に少ないです。加えて、自社の組織内に資産としてパートナーの細部に渡る情報が蓄積されているメーカー企業も本当に少ない。
パートナーカルテ無くしてパートナーさんは動きません。
そこで本記事では、パートナーカルテ(パートナープロファイル)を入力するのは何のためか?という原点に立ち返り、その目的を3つに整理して解説します。
結論:絞り込んだトップパートナー候補の「支援戦略を練る」ための土台
先に結論からお伝えすると、パートナーカルテ(パートナープロファイル)を入力する目的は、絞り込んだトップパートナー候補・重点支援するパートナーの解像度を上げ、勘や記憶ではなく「情報」に基づいて支援戦略を練れるようにすることです。
ここで大前提として押さえていただきたいのが、カルテ運用の順番です。何百社あるパートナー企業全社のカルテを同じ深さで作ろうとすると、確実に破綻します。基本の流れは以下の順番です。
- トップパートナー候補・重点支援すべきパートナーを絞り込む(例:営業人員数などの外形基準でターゲティング)
- 絞り込んだパートナーとの打ち合わせ・ヒアリングでカルテを作成・入力する
- カルテを見て支援戦略を練る(課題仮説→提案を回し続ける)
つまりカルテ(プロファイル)は、「絞り込むためのツール」ではなく、絞り込んだ先の重点支援するパートナーに対して、戦略を練るために使うツールです。この前提の上で、入力する目的を3つに分解すると次のとおりです。
- 重点支援パートナーの情報を可視化・体系化するため
- 商談前に課題仮説を立て、支援戦略を練るため
- 成果を記録し、重点支援パートナーの絞り込みを見直すため
それぞれ順番に見ていきましょう。
目的1:重点支援パートナーの情報を可視化・体系化するため
1つ目は最も基本的な目的で、重点支援すると決めたパートナー企業の情報を、チームの誰もが見られる形で可視化することです。
パートナー企業のビジネスモデル、キャッシュポイント、組織体制、既存顧客の業種・従業員規模、事業部門で追っているKGI・KPI、他に扱っている競合商材、自社商材のマージンが営業担当の成績に反映されるのか——。
こうした情報が担当者の頭の中や個人メモにしかない状態では、パートナーごとの強み・弱みを組織として把握できず、担当変更のたびに関係構築がゼロリセットされてしまいます。
私自身、前職でパートナーセールス部門に異動した当初は、何百社あるパートナー企業のセグメント分けもターゲティングもできていない状態でした。そこでまず「営業人員数=10名以上」という基準でトップパートナー候補としてターゲティングするパートナー企業群を仮置きし、絞った先との打ち合わせを通じてパートナー様ごとのカルテ(プロファイル)を作成しました。その経緯は以下の記事に詳しく書いています。
パートナーセールスへ異動後の悲劇と最初の3ヶ月間〜パートナー戦略の立て直し記録〜
目的2:商談前に課題仮説を立て、支援戦略を練るため
2つ目は、パートナー商談前の事前準備、つまりカルテ(プロファイル)を見て課題仮説を立て、支援戦略を練るための材料にすることです。ここがパートナーカルテの真価だと考えています。
パートナーさんに自社プロダクトの「ファン」になっていただくための最初のステップは、「パートナーの課題を解決するスキームを考え抜く」「パートナー側が本業が儲かるスキームを考え抜く」ことです。カルテに蓄積した情報から「このパートナーさんはどのような事業戦略を描いているのか」「どのような課題が出ていそうか」という仮説を立て、商談の場でパートナーさんと答え合わせをしながら、課題解決のスキーム・パートナーさんが儲かるスキームを考え・提案し続ける——このサイクルを回すための材料がパートナーカルテ(パートナープロファイル)です。
つまりカルテは「記録簿」ではなく「戦略構築の材料」です。入力して終わりではなく、商談前に必ず見返して仮説を立てるところまでがセットだと捉えてください。ファン化のステップ全体は以下の記事で解説しています。
目的3:成果を記録し、重点支援パートナーの絞り込みを見直すため
3つ目は、最初の絞り込みが正しかったのかを検証し、重点支援パートナーの入れ替え・見直しにつなげるためです。
最初の絞り込みは、営業人員数などの外形基準によるいわば「仮説」です。その仮説が正しかったかどうかは、支援を続けながら数値で検証するしかありません。そのためパートナーカルテには定性情報だけでなく、商談数・受注件数・売上額(粗利額)・受注率といった成果指標(KPI)も記録します。
成果を数値で可視化することで、「思ったより動いていない重点支援パートナー」や「実は伸びているノーマークのパートナー」が見えてきます。これにより重点支援先の入れ替え・見直しができ、限られたリソースを常に最も効果的なパートナーに振り向け続けられるようになります。
また、パートナーセールスの成果は企業単位の情報だけでなく、営業担当者一人ひとりの情報にも大きく左右されます。企業単位の「パートナーカルテ(パートナープロファイル)」と対になる「担当者カルテ(担当者プロファイル)」については、以下の記事をご参照ください。
よくある失敗:「入力が目的化」してしまうケース
最後に、パートナーカルテ運用でよくある失敗パターンを挙げておきます。
- 絞り込まずに全パートナーのカルテを作ろうとする:何百社分を同じ深さで埋めるのは不可能です。まず重点支援するパートナーを絞り、その先から深く作りましょう。
- 項目を埋めることがゴールになっている:商談前に見返されないカルテは、ただの入力作業です。
- 更新のタイミングが決まっていない:パートナーの体制や戦略は変わります。商談・定例のたびに更新するルールをセットにしましょう。
- 個人のメモ帳になっている:チームで共有されて初めて、組織としてのパートナー支援に活きます。
まとめ
パートナーカルテ(パートナープロファイル)の位置づけは、「重点支援するパートナーを絞る→カルテ(プロファイル)を見て支援戦略を練る」という流れの中にあります。その上で、入力する目的は以下の3つでした。
- 可視化:重点支援パートナーの情報を体系化し、強み・弱みを組織で把握する
- 戦略立案:商談前にカルテを見返して課題仮説を立て、課題解決の座組を提案し続ける
- 見直し:KPIを記録して絞り込みの妥当性を検証し、重点支援先を入れ替えていく
「絞り込んだ重点パートナーの状況を構造的に記録し、課題仮説→提案→見直しのサイクルをすべて情報に基づいて回すための土台」——これがパートナーカルテの本質です。
なお、パートナーカルテに入れるべき項目は、細かいものまで含めると多岐に渡ります。具体的な項目について知りたい方は、本記事下部の問い合わせフォームやDMより、お気軽に個別お問い合わせください!