こんにちは、パートナーセールス研究会 発起人の葛西です。
2026年7月13日(月)に、大阪・北新地にて「パートナーセールス研究会 in 大阪」を開催しました。大阪での開催は新年会以来となり、当日は関西のパートナーセールス従事者の皆さまに多数お集まりいただきました。
今回のテーマは「金融機関とのビジネスマッチング」。地方銀行・信用金庫とのアライアンスを実際に立ち上げ、拡大させてきた3R&innovation株式会社 代表取締役の北川誠さんに、金融機関の収益構造から狙い目の銀行の見極め方、現場のリアルな攻略法までを語っていただきました。
本レポートでは、当日の講演とQ&Aの模様をお届けします。
登壇者プロフィール
3R&innovation株式会社 代表取締役 北川 誠 氏
高校を3ヶ月で退学し、ラーメン店からファーストキャリアをスタート。ラーメン店では約8年間、新規店舗開発やイベント・メディア対応に携わり、人事部長を務める。
その後独立し、飲食企業向けの採用支援・人事支援に従事。友人が経営する不動産会社に事業責任者兼人事責任者としてジョインし、光回線などのアライアンス事業を立ち上げる。
2022年に人事評価SaaS「あしたのチーム」へ参画し、アライアンス部門を統括。
現在は3R&innovation株式会社(5期目)の代表として顧問サービスを主軸に活動し、2026年7月末にはアライアンス支援専門の株式会社ENGINE.を共同創業予定。
第1部:アライアンスの実績 ― 不動産×光回線からSaaS×金融機関まで
冒頭は北川さんの自己紹介とアライアンス実績の紹介からスタートしました。
北川: もともと不動産会社でアライアンスをスタートしまして、立ち上げメンバーは2人でした。1年目で約10人、2年目20人、3年目35人と急成長した組織です。扱っていた商材はNURO光や関西でいうeo光といった光回線、モバイル回線、ウォーターサーバー、生命保険など、不動産に関連する商材です。
アライアンス先は、SUUMOやHOMES、センチュリーのような賃貸仲介業者さんです。北新地の駅の周りだけでも仲介業者さんは20件くらいある。そこに飛び込みで「うちのインターネットを取り次いでください」と回って、約3ヶ月で300社くらいと提携しました。1店舗あたりの仲介件数は月15〜20件くらいなので、月間4,000〜5,000件くらいのご紹介をいただけるようになりました。
続いてあしたのチームでは、人事評価SaaSのアライアンスの立ち上げを初期3名でやりました。最終的には3年間で15名まで組織が拡大。協業先は金融機関、大手自動車ディーラー、士業、そしてOA商社です。立ち上げ期はアライアンス経由がほぼゼロで直販が9割でしたが、3年後には直販6割まで売上構成が変わりました。それに伴って、当初年間5億円ほど投下していたマーケティングコストが1億円ほどに減りました。
第2部:なぜ金融機関はビジネスマッチングをするのか ― 銀行の収益構造から読み解く
本編ではまず、「そもそもビジネスマッチングとは何か」を銀行の収益構造から解説いただきました。
北川: パートナーセールスをやるにあたって、パートナーのことは徹底的に知ろうというのが僕のスタンスです。とにかく半沢直樹をめちゃくちゃ見て(笑)、銀行のことをよく知る。仲良くなった行員さんから「銀行ってどんなところなのか」を収集していきました。
銀行の収益は、大きくは金利で儲ける「資金収益」と、手数料で儲ける「役務収益」に分かれます。ビジネスマッチングが関係するのは役務収益です。シンジケートローンの手数料、事業承継・M&Aの手数料、そして我々からのビジネスマッチング手数料で銀行は収益を上げています。

では、なぜ銀行はビジネスマッチングに力を入れるのか。鍵は銀行の規模格差にあります。
例えば三菱UFJ銀行は107兆円とか貸しているんですね。一方で預金量ランキング50位くらいの銀行だと4兆円とか。金利が0.1%上がると、UFJは何もしなくても1,000億円くらい収益が上がる。ところが、例えばきらぼし銀行様だと0.1%上がっても50億円しか上がらない。つまり小さい銀行ほど資金収益では成り立たないので、役務収益=ビジネスマッチングに向かうわけです。

もうひとつの背景が、金融庁が2014年頃から推進する「事業性評価」です。
事業性評価とは、その会社の事業をよく見て、成長可能性をちゃんと見極めてから融資しましょうという考え方です。課題が人手不足なのか設備投資なのかを見極めた上で、必要なソリューションを提供する。だからビジネスマッチングをやる、というのが本来の立て付けです。ただ実態としては、資金収益が足りないから役務収益を上げるためにビジネスマッチングをする、となっているのが現状です。
第3部:ビジネスマッチングの現状と「狙い目」の見極め方
開拓のリアル ― 電話は断られ、顧問経由でも断られる
北川: これから開拓する会社さんは、いろんな銀行に電話をかけまくって「資料を送ってください」と言われたり、ガチャンと切られたりしていると思います。銀行OBや金融機関に繋がっている顧問に窓口を紹介してもらう、金融機関が集まる地域創生系のイベントで営業をかける、というのが定番ですが、結局は資料送付で終わったり、何らかの理由をつけて断られたりする。今から金融機関を開拓するのは非常にハードルが高いのが現状です。
一方の銀行側にも、機会損失が起きているといいます。
銀行のビジネスマッチング提携先は1行あたり300〜500件あると言われています。ただ、本部の方に聞くと「実際に紹介できているのは5個くらい」。福利厚生やLED電球のような分かりやすい商材ばかりが紹介されていて、セキュリティやAIのような今のトレンドに合った商品は意外と持っていない。本当にいい商品でもフロントで断ってしまっていて、銀行側も機会損失しているんです。
狙い目の銀行 ― 「預金量が小さく、県内シェアが低い」地銀
北川: 関東・関西・東海の銀行について、預金量と県内シェアを一覧化しました。関東で今ビジネスマッチングを伸ばしているのは、埼玉のA銀行、千葉のB銀行、栃木のC銀行です(レポート上では非公開)。例えばB銀行やA銀行は預金量が5兆円ほどしかなく、金利が上がっても資金収益が伸びない。しかも県内シェアは、埼玉りそなや千葉銀という「王様」がいるので10%強しかない。だからビジネスマッチングでお客さんとの関係を作りながら取引を維持していく戦略になるのです。

関西ではD銀行とE銀行(レポート上では非公開)ですね。両県は県民性がすごくバチバチで、お互いのエリアに優秀な人材を配置してマーケットを取り合っているので、ビジネスマッチングも活発です。一方、大阪はメガバンクが圧倒的にシェアを持っているので、ビジネスマッチングを頑張っている地銀は実はあまりない。ただ、府外の地方銀行の大阪支店のような「県外支店」には優秀な方が配置されがちで、結構狙い目です。
私はこのデータを毎年3月の銀行決算のタイミングで更新して、どこを開拓するかを分析しながら進めてきました。
もうひとつの狙い目 ― 信用金庫とLinkers
北川: 信用金庫は全国に199あります。地銀の中でも一番小さな規模くらいの地銀と同じくらいのサイズの信金であれば、ほぼ地銀と同じような動きをしてくれます。大きな信金はだいぶ提携で埋まってきていますが、小さな信金はまだセミナーのネタを探していたりするので、ポテンシャルはあります。
北川: それから、金融機関といえばリンカーズさんです。ほとんどの銀行の案件管理システムはリンカーズ製で、「Linkers for BANK」の広域連携というサービスを使うと、直接提携していなくても、リンカーズが提携する60くらいの金融機関から間接的に紹介を受けられる仕組みがあります。リンカーズさんはもともと製造業系でSaaSとの繋がりが薄いので、SaaS企業にとっては狙い目だと思います。
お知らせ:アライアンス支援専門会社「株式会社ENGINE.」設立へ
講演の最後には、北川さんから新会社設立の発表がありました。
北川: アライアンス専門の会社、株式会社ENGINE.を7月末に設立します。「アライアンスをすべての企業の成長エンジンに」というコンセプトです。銀行の本部と提携できても現場が動かない、ということがすごく多い。なので僕らは、まず現場の営業マンにリサーチをして、「この商品いいよね」と現場が言ったものだけを本部やキーマンに持っていく。開拓の前工程のリサーチと、開拓後の伴走支援をやっていきます。
Q&A:参加者からの質問
セッション後半は、事前質問とライブQ&Aに寄せられた多数の質問に答えていただきました。一部を抜粋してご紹介します。

Q1. 地銀内で「事業性評価」はどこまで浸透しているのでしょうか?
北川: 行員さんはほぼほぼ理解していないと思っています。事業性評価シートというフォーマットがあって、とりあえずそれを回収しているだけ。入行時の研修で必ず触れられるので説明は受けていますが、本質的に理解しているというよりは、入力すると評点が出る、というくらいに簡素化されています。10年経っても変わっていないと言われていますね。
Q2. 銀行員が紹介したくなるサービスの基準は?手数料の取り分が大きい方がいいのでしょうか?
北川: 手数料が大きいものはもちろん喜ばれますが、手数料が大きい=販売価格が高いか提案難易度が高いのいずれかになることが多いので、実はあまり関係ありません。いま銀行のビジネスマッチングで一番伸びているのは「OFFICE DE YASAI」のKOMPEITOさんで、金融機関から毎月200件くらい紹介が来るそうです。わかりやすく言うとオフィスグリコの野菜版です。分かりやすくて導入ハードルが低いから紹介しやすいのです。その次はいまだにLED電球です(笑)。それくらい、銀行員には「分かりやすいもの」が一番なんです。
北川: また、支店長は支店の収益で評価されますが、課長・次長クラスは「どれだけ取り次いだか」というビジネスマッチングのポイントでも評価されます。なので手数料額よりも、紹介しやすさが重要です。
Q3. アライアンスの同意書回収はどこの銀行でも必須ですか?
北川: 基本的には必須です。個人情報の取り扱い義務があるので同意書は絶対に回収しないといけない。ただタイミングは銀行によって違って、紹介の時点で回収する厳格な銀行もあれば、成約して手数料が発生するときにまとめて回収する緩い銀行もあります。
Q4. ビジネスマッチング契約の締結に半年かかると言われます。短縮する方法はありますか?
北川: とにかく追いかけ続けることです。銀行は3月決算・4月の大異動・9月の異動と、3・4・9月が繁忙期ですが、それ以外の時期は実はそんなに忙しくない。ただ上層部に上げるのが面倒くさいだけなのです。契約締結には、決算書を預かって稟議書を書いて部長に上げ、審査部に回して、頭取の印鑑をもらいに行く、という銀行もあるので普通にやれば3ヶ月はかかる。でも担当者が手元で温めている期間も3ヶ月くらいあるので、決裁ルートを確認して「フローを分かっていますよ」というプレッシャーをかければ、割と早くジャッジしてくれます。
葛西: 直販と同じで、決裁ルートを確認して「どういうルートでいつ」まで詰めきらないとダメ、ということですね。あと、企業の社格によってもスピードは変わりますよね?
北川: そうですね。上場企業だと門が緩くなる一方、スタートアップは大体赤字じゃないですか。銀行は赤字を嫌うので長くなりがちです。3期分の決算書が必要になるので、財務状況はシビアに見られます。
Q5. 信金はスケールするイメージがないのですが、どんなオポチュニティがありますか?
北川: どこの信金とやるかが決定的に重要です。周りに田んぼしかないような信金は法人融資自体をあまりやっていない。信金の中でも上位群の信金であれば、ほぼ地銀と同じように動きます。全国199のうち、動くのはよくて50くらい、上位3分の1〜4分の1という感覚ですね。
Q6. ビジネスマッチングの窓口と営業店はどう連携しているのですか?
北川: 銀行によって「本部が強い」パターンと「営業店が強い」パターンに分かれます。本部が強い場合は、母店と呼ばれる本店クラスの大規模支店に対して、今期何件やるかをトップダウンで握ってきます。営業店が強い場合は、本部のソリューション営業担当に案件をトスする連携型です。最近は地方創生グループのような部門ができて、担当者が10店舗くらいのブロックを受け持ち、日々営業店を回って勉強会やマッチングの紹介をしている銀行もあります。
Q7. 支店訪問なしで案件を作ることは可能ですか?
北川: 初動は、freeeさんやSmartHRさんとかでさえも相当訪問したと思います。実績を作ってしまえば訪問せずに案件が出てくるようになりますが、全くゼロベースで訪問なしは難しいです。せめてどこかの支店・エリアで実績を作って横展開するというのが現実的です。
Q8. ディストリビューターやOA商社と比べた、地銀ならではの提携メリットは?
北川: ダントツで成約率です。地銀から紹介されるお客さんは財務状況がいい。銀行は決算書を預かっているので、このサービスを入れられない会社はそもそも紹介されてこないんです。金額を理由に断られることがほぼない。加えて、地方は役員クラスが商談に出てくることが多いため、リードタイムも短い。あしたのチーム時代、OA商社と地銀では成約率が10%くらい違いました。
まとめ
金融機関とのビジネスマッチングは「今から開拓するにはハードルが高い」一方で、銀行の収益構造と評価制度を理解すれば、狙うべき相手と攻め方が明確になる――というのが今回の大きな学びでした。
- 預金量が小さく県内シェアの低い地銀こそビジネスマッチングに本気
- 銀行員に選ばれるのは「手数料が大きい商材」ではなく「分かりやすくて紹介しやすい商材」
- 契約リードタイムは決裁フローの把握と追いかけで短縮できる
- 地銀経由の紹介は財務健全な顧客×役員商談で、成約率がダントツに高い
北川さん、貴重なお話をありがとうございました!

セミナー終了後は懇親会も開催し、大阪の夜は大いに盛り上がりました。
次回イベントのお知らせ
次回は2026年8月5日(水)19時より、東京・虎ノ門にて開催します。SmartHRのパートナービジネスを立ち上げた向髙立一郎さんをお招きし、大手ディストリビューターやOA商社・大手販社の攻略法をお話しいただきます。詳細は下記のページをご覧ください。
https://partnersales.biz/release/partner-sales-workshop-20260805/
この記事を書いた人
葛西 了太(かさい りょうた)
パートナーセールス研究会 発起人/株式会社synergeee 代表取締役
2014年に株式会社ビズリーチへ入社し、トップセールスを2度獲得。新規事業責任者・代表特命案件などを経て、2021年よりHRMOS事業部にてパートナーセールスに従事。2024年2月に「パートナーセールス研究会」を設立し、約600名規模のコミュニティを主宰。パートナーセールスの立ち上げ・拡大の伴走支援を行う。