【セミナーレポート】大手代理店を動かす パートナーセールス0→1構築 勉強会

パートナーセールス研究会 発起人の葛西(@kasai_201406)です。

8/5(水)に、パートナーセールス研究会主催の勉強会「大手代理店を動かす パートナーセールス0→1構築」を開催しました。会場は株式会社リーディングマーク様のオフィス(虎ノ門)をお借りし、SaaS・IT企業のパートナーセールス担当者を中心に34社・50名の方にご参加いただきました。

講師を務めていただいたのは、株式会社SmartHRのアライアンス統括部 部長を務めながら、株式会社Growth Partner Makerの代表としてパートナーセールスの立ち上げ支援も手がける向髙立一郎(むこうだか・りゅういちろう)さんです。今週は、そのセミナーレポートを書かせていただきます。

セミナー表紙:大手代理店を動かすパートナーセールス0→1構築

講師自己紹介

講師自己紹介:向髙立一郎さん
これまでの立ち上げ実績

本日のテーマ:大手代理店が「動かない」原因を3つの視点から

向髙:
ここから本日の本題に入っていきます。今日は3つの視点からお話しさせていただきます。すでにパートナーセールスを立ち上げられている会社も、これからという会社もあると思いますが、多くの企業から伺うのは、やはり「大手代理店と提携したものの、全く動かない」という話です。非常によく聞くこの問題の原因を、僕の経験からお伝えしていきます。大きく、社内・社外・市場という3つの視点でお話しさせていただきます。

まず、こうしたことはよくあるのではないでしょうか。契約してキックオフした直後は大いに盛り上がっていたのに、全く案件が出てこない。勉強会を開いているのに、一向に提案されていない。進捗を聞いても、あまり動いていない。こうしたケースは非常に多くありますが、僕の見解では、これは代理店だけに原因があるわけではなく、メーカー側・提供する側にも設計のミスがあると考えています。

この図はかなり考えて作ったのですが、パートナーセールスを担当している方は、孤独に取り組んでいるケースが非常に多いと感じています。パートナーセールス担当になり、パートナーを動かすことに必死になっているものの、なかなかうまくいかない。そこで施策——例えばインセンティブを設計する、育成に取り組む、誰にアプローチすべきかを考える、キーパーソンを探す、といったことに取り組まれるのですが、そもそも自分の会社の人たちときちんと協力体制が築けているかが非常に重要なポイントです。今日はそこも含めてお話ししていきます。

失敗する構造:点の施策で止まる

社内編:パートナーセールスは「全社を挙げた総力戦」

「代理店に営業だけやってればいい」は失敗の要因

向髙:
まず社内編です。パートナーセールス担当に求められるスキルについてですが、「代理店に対して営業だけやっていればいい」という考えは、相当な間違いであり、失敗の要因だと思っています。さまざまな情報を持って取り組まなければ、個人的には成功しないと考えています。先ほど挙げた社内・社外・市場が重要であり、これらがすべて連動していくこと、そしてそのすべてを扱いながら事業を推進していくスキルが求められます。

パートナーセールス担当に求められるスキル:社内・社外・市場

僕自身も経験しましたが、SmartHRは直販が非常に強く、まず直販で伸びていった会社です。そこからパートナー事業を立ち上げてきたのですが、直販である程度の売上があると、さまざまな部署からパートナーセールスに対する懐疑的な意見が出てきます。

  • 経営層:「スピード感は直販が早い。パートナーと提携して、いつになったら売上になるの?」
  • マーケ:「直販のリード獲得で精一杯です」
  • IS:「代理店経由でリードを取られた」

こうした反発の声は非常に多くありました。ただ、皆さんそれぞれのKPIを追っていますし、経営層であれば当然、事業の中での優先順位がありますから、一定は仕方のないことだと思います。だからこそ「パートナーセールスとは何なのか」を理解してもらう必要があると考えています。

大塚商会立ち上げ時に実際にやった「社内の草の根活動」

向髙:
これは僕がSmartHRで最初に大塚商会との取り組みを立ち上げた時に実際に行ったことですが、経営層はもちろん、IS・FS・カスタマーサクセス・マーケティングの各部署それぞれに、「そもそもパートナービジネスとは何なのか」という話——代理店をどう動かすのか、一般的にどのようなビジネスモデルがあるのかという話から、始めるメリット・デメリットまで、すべてお伝えしていきました。本当に一部署ずつ、細かく説明していったのです。

そのうえで、各部署とどのような点でコンフリクトが起きるのかをしっかり話し合い、バッティングした場合のルールや、互いにウィンウィンになる業務フローを一つずつ設計していきました。それができてから最終的に、パートナーを動かしていくための協力を各部署にお願いしていく、という流れになります。

パートナーセールスは、代理店へのアプローチにかなりの工数を使いますが、その先には営業して成約すること、成約した後のカスタマーサクセスも必要で、一人では絶対にできません。だからこそ、営業の方に商談を支援してもらう、カスタマーサクセスの方々にオンボーディングで協力してもらうといった体制作りも、一から作っていきました。

パートナーと提携すること自体は非常に簡単です。しかし、そこから実際に実績を上げていくためには、社内のルールをしっかり作っていくことが本当に重要です。ここをおろそかにして進めると、後々こじれてしまい、結局そこに活動時間が取られて、パートナーセールスの動きが鈍ってしまいます。ですから、最初にこのあたりを整理しておくことが重要です。

草の根対話の実例:対話の3ステップ
事前のルール設計と経営層の巻き込み

経営層には「時間がかかることは投資」だと伝える

向髙:
経営層に理解していただくことも非常に重要です。パートナービジネスは代理店を挟むモデルであるため、代理店が自分たちのサービスをしっかり勉強し、紹介していくというステップが必要で、直販より当然時間がかかります。そうした育成に時間がかかることは「投資」だということ、そして逆に言えば、自社の営業リソースを活用せずにレバレッジを効かせていけるところが強みだということを、経営層にきちんと伝えて理解してもらう。そのうえで、経営層から各部署——先ほどのISやFSの方々にも伝えてもらえるような体制作りを進めていくことが必要だと思います。

この社内編のポイントとして、もし今、パートナービジネス・パートナー制度の立ち上げがうまくいっていないのであれば、社内に課題があるのかもしれません。そうした点を改めてチェックしながら、社内の草の根活動に取り組んでいただくと、解消できる部分もあるのではないかと思います。

社外編:大手代理店を「型」で攻める

IT流通の全体像

向髙:
次に社外編です。こちらはパートナーを開拓していくお話になります。すでにご存知の方も多いかもしれませんが、ITサービスの流通に登場するプレイヤーはほぼ決まっています。SaaSやIT商材を扱っている会社なら一度は聞いたことがある、ダイワボウ情報システム(DIS)さんとSB C&Sさんという「ディストリビューター」と呼ばれる流通会社が存在します。その下には数万という販売店が繋がっていますが、今回はよく活用される大手代理店に絞ってお話しします。リコージャパンさん、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンさん、キヤノンマーケティングジャパンさん、そして大塚商会さんです。

その中で僕が定義しているのが、どうやって攻めていくかという「型」です。

  • トップダウン型(ディストリビューター:DIS・SB C&S)
    └現場ではなく本部側から攻めていく
  • ボトムアップ型(リコージャパン・富士フイルムBI)
    └現場の営業部隊から攻めていく
  • 複合型(大塚商会)
    └両方を使ってうまく攻めていく
チャネルの全体像:各社はどこに位置するか

トップダウン型:ディストリビューター(DIS・SB C&S)の特徴

向髙:
まずトップダウン型、ディストリビューターのご紹介です。基本的な話ですが、ダイワボウとSB C&Sは、直接エンドユーザーに営業・提案することはしません。基本的に販売店を挟んでサービスを提供していくビジネスモデルです。

ここで非常に重要なポイントは、彼らには「営業」というよりも、パートナーに対してマーケティングをする、情報収集をするという視点で関わっていくとうまくいきやすいということです。彼らに「売ってもらう」ことをお願いしてしまうと、うまくいきません。あくまでこれらの会社と契約するのは、流通網を広げていく観点で進めていくのがよいと考えています。

ダイワボウさんやSB C&Sさんと提携するメリットは、その下に先ほど述べた通り数万社の販売店が繋がっているため、1社1社の販売店と契約したりルールを定めたりする必要がないことです。ダイワボウ・SB C&Sさんと契約を結べば、一定のルールのもとで販売店に対してサービスを提供していけます。

ディストリビューター攻略の3ステップ

向髙:
攻略の仕方としては、大きく3つあります。この3つを押さえることが最低条件だと思います。

  • ①販売推進部を押さえる
  • ②拠点のキーパーソン(DIS:支店長/SB C&S:部長クラス)を押さえる
  • ③営業担当だけでなく「営業アシスタント」を押さえる

まずは契約した際に販売推進部を押さえることが大事です。販売推進部は基本的にその会社の組織図などを保有していますので、まず情報をもらうことが最初のステップになります。また、販売推進部では自社のSaaSサービスやプランを登録でき、どのような金額感で登録するかもここで決められます。そうしたインセンティブのルールや販売ルールを決めて、売りやすい状況を作っていくのが1番目です。

次に2番目です。各社には拠点があり、拠点ごとに方針が異なるため、DISであれば拠点ごとの支店長を、SB C&Sであれば部長クラスの方を押さえていきます。その方々に拠点の方針をヒアリングし、それに合わせて自社のSaaSやメーカー製品をどう提案していくかを紹介していく形です。ここを押さえられれば、各営業担当の方々にアプローチできるようになり、3番目に行き着きます。

ここは初めてこのビジネスに取り組む方が見落としがちな点ですが、営業担当を押さえることに加えて、営業アシスタントを押さえることも非常に重要です。なぜなら、アシスタントの方々は、ユーザーからのさまざまな商品の問い合わせを、販売店経由で毎日のように受けているからです。営業担当はそのすべてをさばききれません。そのため、アシスタントの方がある程度選定して紹介しているという実態があります。ですから、例えばSmartHRであれば「人事労務のサービスを探している」という時に「SmartHRだ」と思い出してもらえるように、アシスタントの方々にもしっかり営業をかけていくことが重要です。こうした方々も押さえていくことで、だんだん認知が広がり、販売店に紹介してもらえる状況を作り出すことができます。

DISの組織図と押さえる動線

年1回の「DISワールド」参加はほぼ必須

向髙:
DISの組織はこのようになっており、販売推進部と営業本部があります。先ほどのルールを作るのが販売推進の本部で、各営業本部では支店長を押さえ、営業アシスタントに繋がっていくという進め方をします。ただ、この王道の進め方は、どうしても時間がかかります。なかなか紹介してもらえないこともあります。

そこで活用したいのが、年に1回開催される「DISワールド」という、DISの1年間で最も大きなイベントです。全国のDISの支店長などが一堂に集まる場ですので、ここに参加するとほとんどの人とまず繋がれます。また、イベント出展の費用が数十万円ほどと比較的低コストで、さまざまな販売店やパートナーと一気に繋がれるため、ここへの参加はほぼ必須と言えます。

SB C&Sさんも、同様の組織構造の中で動いていきます。前述の通りSaaSの推進部があり、そこと繋がることで販売ルールなどを決めていくことができます。部長クラスを押さえながら、営業担当に繋がっていくという進め方です。SB C&SさんにはSaaS専任の組織もありますので、この点をうまく活用できると、SaaS専任の組織が積極的に販売・提案してくれるようにもなります。

ボトムアップ型①:リコージャパン

向髙:
次に、販売店・リセラーと呼ばれる領域です。僕はボトムアップ型と定義しています。キヤノンマーケティングジャパンさんについては僕の解像度がやや低いため、今日はリコージャパンと富士フイルムビジネスイノベーションに絞ってお話しします。

リコージャパンは、組織としてメーカー側の機能と販売店の機能が存在しており、攻めていく際は、大きく2つの事業本部を対象にしていく形になります。特徴としては、全国に拠点を持っている点と、ICT事業部という戦略商材を決める事業部がある点です。基本的にはこの2つを押さえていくことになりますが、本部だけを押さえても営業としては数字が動かないため、現場からしっかりアプローチしていくことが必要になります。

現場の営業担当は主に4パターンいらっしゃいます。それぞれ特徴があり、ルート営業専門の方、ソリューション営業としてITの知識を持ち複合的な提案ができる方、さらに精鋭部隊のような組織、そしてリコーの下にも販売店が存在するため、そこを扱う担当の方がいらっしゃいます。こうしたところを一つずつ攻めながら進めていく形になります。

また、拠点にもランク付けがあります。首都圏のリコーを指す拠点ランクがあり、ここは市場規模が大きいため、有力な営業担当が多数いらっしゃいます。R1は首都圏から少し外れた、ある程度の市場規模を持つ拠点で、以下R2と続きます。リコーさんは前述の通りボトムアップで進めていく必要があるため、まず拠点から攻めていくことが必要です。実績をどんどん作り、別拠点に横展開していく。さらに、リコーさんの中で注力商材として扱われる「スクラム」への登録を進めつつ、全体の認知を図りながら実績を上げ、最終的には上位の組織と連携していくことで、リコーさんの中での存在感を高めていくという方法です。

ボトムアップ型②:富士フイルムビジネスイノベーション

向髙:
富士フイルムさんも近しいやり方になります。ソリューション営業部・メジャー営業部・エリア営業部がそれぞれあり、メイン商材ベースで分かれています。こちらも「特約店」というBP(ビジネスパートナー)の会社を挟む仕組みがあり、富士フイルムから直接ユーザーへ提供する部隊と、BP経由でユーザーに提供する組織に分かれています。

こちらも基本的には支社を分類して攻め方を変えていきます。東京都内の支社は市場が大きいため、まずそこを攻めながら、横展開の事例を作っていきます。また、SB C&Sさんやダイワボウさんと提携していることで、富士フイルムさんにも一定の情報が提供されており、動く支社と動かない支社が出てきます。その際に停滞しているのはどこなのかを見極めながら、そこに対して活性化するアプローチを取っていくことになります。

また、主に支社長の方がキーパーソンになってくるため、積極的にコネクションを作れるようアプローチしていきます。さらに、富士フイルムさんが扱っている既存の商材と自社の商材をパッケージ化し、組み合わせて販売していくことで、富士フイルムの営業担当の成績になりやすくなります。この組み合わせをうまく設計していくことが重要です。

複合型:大塚商会

向髙:
最後に大塚商会です。大塚商会は複合型と位置づけており、トップダウンとボトムアップ両方の効果があります。SmartHRで実際に行ったのは、大塚商会さんのマーケティング本部と連携し、提携後にリードを提供した方にインセンティブを提供するという施策です。大塚商会さんの場合、営業担当にダイレクトに評価がつくため、インセンティブの効果が非常に高いのです。トップダウンでインセンティブの設計を流していただき、営業まで落とし込んでいただくことで、大きな成果が得られると考えています。あわせてボトムアップとして、前述の通り現場にいらっしゃる方々を一人ひとり押さえていく。インセンティブと現場、両方から挟み込む形で認知を広げていきます。

大塚商会さんの組織はこのようになっており、商材ベースで分かれています。自社サービスのターゲットに合わせて、どこを攻めていくかを考えながら進めていく形になります。

攻略について、SmartHRで実施してきたステップの概要はこの通りですが、大塚商会さんは「数字を握る」ことに関しては、リコーさんや富士フイルムさんよりも非常にやりやすい会社です。「今期はこういう目標でやっていきましょう」という話をしていくと、その目標に向かってくださることが多いのです。そのためのアプローチ方法を一緒に決め、振り返りを行い、その情報を部門長に定期報告していくことを繰り返すことで、大塚商会さんがどんどんこちらを向いてくれるようになります。

複合型:大塚商会

代理店の知識は「顧問」やコミュニティで補う

向髙:
このように代理店の方々を動かしていくわけですが、この辺りの知識は、初めて取り組む場合はなかなかわかりません。そのため、代理店のことに詳しい方に聞くことが非常に重要だと考えています。例えばリコーさんや富士フイルムさんには、何十年も働いた方が顧問としていらっしゃるケースがあり、社内の実情を聞きやすくなったり、上層部と繋がれる機会が得られたりします。SmartHRでも顧問を活用して取り組んだ実績があります。こうした手段も使いながら、そしてこのようなコミュニティをベースにしっかり情報を取得していくことが、早期に立ち上げるヒントを見つけるポイントではないかと思います。

市場編:エンドユーザーの認知が代理店を動かす「認知サイクル」

向髙:
最後に市場編です。先ほどの図でお話しした通り、パートナーセールスがうまくいっていない原因は、社内との連動、そしてユーザーとの連動ができていないことがかなりの割合を占めていると個人的には考えています。まず、メーカー側——SaaS提供会社側にも、しっかり力を入れて取り組むべきことがあります。その一つがダイレクトマーケティングで、自社のサービスをまずユーザーに知ってもらう取り組みが重要です。これにより、お客様側から代理店に問い合わせが入ったり、「あのサービスなら知っていますよ」という反応が返ってきたりと、ユーザーが知っている状態を作れます。

その時点でサービスが認知されているため、全く知られていないサービスよりも、明らかに提案を受け入れられやすい状況を作れます。認知されている状況ができると、今度はその話が代理店側にも徐々に伝わり、「このサービスはかなり売れている」「認知されている」ということが、代理店の中でも空気感として広がっていきます。それによって、代理店が「このサービスをもっと提案していこう」という動きに繋がっていく。こうしたユーザーの認知が、代理店を動かすきっかけになるのです。

ユーザーから「この商品が欲しい」という指名が来て成約率が上がっていくと、代理店にとっても「これは売れる商材だ」という気づきになります。このサイクルが積み重なることで、サービス自体の信頼が形成され、販路もどんどん広がっていく。そうした認知サイクルが出来上がっていきます。

ですから、特にパートナーセールスの0→1を立ち上げる時は、社内としっかり連携していくことが非常に重要です。単純にチャネルの開拓ばかりにフォーカスするのではなく、マーケティングチームと連動して、エンドユーザーが知っている状態をしっかり作り出していく。さらに前述の通り、リード獲得においてISとKPIを合わせる、フィールドセールスにパートナーセールスが得た案件の対応を協力してもらう、オンボーディングはCSにお願いするなど、組織とうまく連動しながら立ち上げていくことを意識する。簡単ではありませんが、こうしたことを実践することでパートナーセールスの成功の確率が確実に上がっていくと思いますので、ぜひこうした点を意識して進めていただければと思います。

メーカーが仕掛ける3ステップの認知サイクル

まとめ:パートナーセールスは全社を挙げた総力戦

向髙:
最後にまとめです。まず社内・パートナー・市場のそれぞれについて、今進めている中でどこにボトルネックがあるのかを把握していただくとよいと思います。本日お話しした内容をチェックリストとして、どこに課題があり、何を解消していくべきなのかをまず棚卸しする。社内に課題がある場合は、該当する部署としっかり話をしながら協力体制を作っていくことが重要です。パートナーセールスは決して一人でやるものではなく、全社を挙げて総力戦で戦っていくものです。本日のお話の中で一つでも活用できるところがあれば、ぜひ活かしていただければと思います。

最後に少し宣伝ですが、私が立ち上げている会社のご紹介です。今お話ししたようなパートナーセールス・代理店網の構築はもちろんですが、これまでの経験の中で、組織がどうあるべきか、効率的にビジネスを回せているかという部分も非常に大事だと感じており、4つの方向性から企業を支援しています。僕自身がその会社の社員というわけではないからこそ、自分の経験をもとに一緒に伴走させていただく形でのご支援もしています。また、単純に販売パートナーを作ることだけでなく、SIerやコンサル系のパートナーなど、パートナーシップの取り組みは実に様々ですが、そうした領域も多くのノウハウを持って取り組んできた経験がありますので、ご支援させていただいています。ご興味のある方がいらっしゃれば、この後の交流会でもぜひご相談ください。

私からのご説明は以上とさせていただきます。ご清聴いただきありがとうございました。

Q&Aセッション

講演後は、質問サービス「LiveQ」に寄せられた多数の質問から、葛西がピックアップして向髙さんにお答えいただきました。

勉強会の様子:34社50名が参加

● 直販で売上がしっかり作れる会社が、パートナービジネスを開始するメリットとして何を社内に訴求した?

葛西:
「SmartHR様のように直販で売上がしっかり作れる会社が、そもそもパートナービジネスを開始するメリットとして、何を社内に訴求されていたのか」というご質問ですね。

向髙:
ありがとうございます。SmartHRでは、ちょうど僕が入社して1〜2年ほど経った頃、獲得できるリードが枯渇してきたという状況がありました。デジタルマーケティングや展示会でリードを獲得し、一定数は取れてきていたのですが、課題となっていたのは、地方や、まだ我々がアプローチできていない企業でした。日本全体で言うと1〜2%ほどのリードしか取れていなかったため、その他のリードを獲得していくために何をすべきか、というのが課題でした。

もともと僕自身が前職でパートナーセールスをやってきたこともありわかるのですが、地方の企業は、地元の地場の代理店からサービスの情報をもらい、それで初めてサービスの存在を知る、ということが実際にあります。それこそ電柱に貼ってあるチラシを見て認知することもあるほどです。そうした層にアプローチするためには、地場にいる販売店を活用していくことが、次のステージとして必要でした。そこで、販売店を活用していくためにディストリビューターやリコーさん・FBJさんと提携していく必要がある、という話を、そもそものビジネスモデルの説明から行い、「地方のリードを獲得するため、獲得を容易にしていくためには、パートナーを使っていくことが重要です」と社内に訴求してきました。

● DIS・SB C&Sの部長クラスや営業アシスタントを押さえる際、どういう説明・ヒアリングをした?

向髙:
DISやSB C&Sさんの部長クラスが結局何を求めているかというと、一つひとつの商材が売れているかどうかももちろん重要なのですが、例えばSaaSの今の市場感——我々で言えば、人事労務やHRの分野はどのような市場感で、どのようなサービスがどう売れているのか、といった情報です。彼らは非常に多くの商材を扱っているため、正直なところ、個別の領域にはあまり詳しくないのです。そうした情報や知見を提供していくことで、「このメーカーと繋がっているとメリットがある」と感じていただけるため、どちらかというとサービスそのものよりは、扱っている商材の市場観などをお話ししていく形です。

アシスタントの方々は、通常は表に出てきません。僕が前職で実践したのは、ゴディバのチョコレートを20個ほど持参して、「今日このチョコレートをアシスタントの方に配らせてください」とお願いし、一人ひとりのアシスタントの方に出てきていただいて、1対1でお話しさせていただく、という方法です。物で釣るようではありますが、まず一度出てきてもらうことが非常に重要ですので、何かしらのきっかけを作って出てきていただく。そして、どのようにお客様に見積もりを出しているのか、どのような商材をどう選定しているのかをヒアリングしながら、「うちの商材なら、こういう形で紹介していただけそうでしょうか」というコミュニケーションを重ね、アシスタントの方が出しやすいメッセージをお願いしていく、といった活動をしていました。

葛西:
なるほど、ありがとうございます。アシスタントの方に出てきてもらうのは大事ですよね。アシスタントの方は社内のオペレーションを熟知されている方が多いので、コミュニケーションのきっかけを増やして親しくなると、いろいろ教えてくださいますよね。

向髙:
まさにおっしゃる通りで、単純に売ってもらう・紹介してもらうことも重要ですが、DISやSB C&Sさんは本当に多様な商材を扱っており、多くの情報を持っています。情報収集するだけでもかなりのメリットがあるので、いろいろな関わり方があります。「売ってくれる・紹介してくれるキーパーソン」もいれば、DIS社内の動向を詳しく教えてくださる方、社内のインセンティブや今の売れ筋を教えてくれる方など、キーパーソンにはさまざまなタイプがいらっしゃいます。タイプ分けをして、いろいろな方と繋がっていくことが重要だと思います。

● 販売店との接点はあり勉強会もしているが、「商材が難しい」と言われて積極的になってくれない

葛西:
「ディストリビューター配下の販売店との接点はすでにあり、勉強会も実施しています。ただ、商材がやや難しいと言われてしまい、積極的になってくれません。先ほどの部長を押さえる・アシスタントを押さえるというお話以外で、繰り返し勉強会をする、わかりやすい営業支援コンテンツをお渡しする、以外に何かできることはありそうでしょうか」というご質問です。

向髙:
そうですね。ご質問いただいた方がどの程度販売店の方々と繋がれているかにもよりますが、正直なところ、こうしたケースはよくあると思います。要するに、「商材がやや難しい」というイメージを持たれてしまっている。つまり、売ったことがないので、どう売ればよいかもわかっていない状態なのです。僕がSmartHRで行ったのは、直販などで獲得したリードや、エンドユーザーから繋がってきた案件を、その販売店に振るということです。まずそれで、数回、売り方を一緒に学んでいただく。すると「実はこの商材、意外と簡単に紹介できるんですね」と気づいてくださったりします。これができるかどうかは企業によりますが、獲得してきた案件をまずパートナーに振ることができるのであれば、それを実施するのが最も立ち上げが早いです。

また、その販売店の中でどの方を押さえているかにもよりますが、キーパーソンを見つけていくことも重要です。営業担当の方々一人ひとりに説明しても、号令がかからないと動かないことがあります。「難しい」と言っているのが担当の方なのか部長クラスの方なのかにもよりますが、こうした場合は上の方からしっかり攻めて、トップダウンで落としていただく活動をしていただくのがベストではないか、というのが僕の回答です。

● 大塚商会において「人を動かす」ために、具体的にどういう施策を打っていた?

向髙:
正直なところ「これをやったから成功した」というものがあるわけではなく、その方々が何に対してモチベートされるかを確認していく、という進め方でした。僕の中では、大きくはお金の欲か、出世の欲かだと捉えています。お金はインセンティブの話です。出世欲については、このサービス自体を注力商材にしていくと、それを売ることが大塚商会さんの中でポイントになり、社内で評価されるようになります。そこにモチベートされる方々もいらっしゃるので、そうした状況を作ることで人を動かす、というのが一つです。そのほかにも、いろいろな道具・方法を使いながら動かしてきたところがあります、というのが事実ベースのお話です。

● 大手代理店と口座を直接開くか、ディストリビューターを挟むか

葛西:
「リコージャパンさんやFBJさん、大塚さんも、口座を直で開くケースとディストリビューターを挟むケースがあると思います。もし前者であれば、どのようなアプローチをしたかお伺いしたいです」というご質問です。

向髙:
ディストリビューターを挟まずに大手代理店さんと直接提携できるのであれば、間のマージンを取られない分、実現できるならその方がよいと思います。ただ、直接契約には各社それぞれの契約条件や社内基準があり、必ずしもすぐに直接契約できるとは限りません。そうした背景もあり、SmartHRの場合はディストリビューター経由で対応しています。

● 顧問・OB人材はどうやって探した?どうやったらうまくマッチングできる?

向髙:
リコーさんやFBJさんの顧問を扱っている会社がありますので、一般的な顧問サービスを活用し、こちらから「富士フイルムさんやリコーさんで、ある程度役職を持っていて、定年退職された方」という条件で探しました。それこそバイネームで「◯◯部の部長や統括部長の方を知っている方を紹介できるか」というレベルまで確認しながら、最適な顧問を探していきました。

葛西:
ありがとうございます。逆に、顧問の方と契約しても、動く・動かない、言ってしまえば当たり外れのようなものもあると思います。どうやって当たり外れを選別したのか、どうやって動いてもらったのか、もしあれば教えていただけますか。

向髙:
そうですね。正直に言うと、そこは避けられなかった部分があります。そのため、顧問契約は例えば最低3ヶ月といった期間で取り組み、顧問の方にも「このように取り組んでもらいたい」とあらかじめお伝えしていました。例えば「3ヶ月で10人の方と接触してほしい、紹介してほしい」といった形で、条件を飲めなければ契約更新はしない、という形で、ある程度ノルマを設定しながら取り組んでいました。

● この会社パートナーセールスうまいな、と思う企業は?

向髙:
内部の実態まではわかりませんが、実績から見てすごいと思うのは、サイボウズさんとOBCさんです。両社とも、パートナーセールスをどう進めていくかが非常に体系化されています。OBCさんはパートナーセールスの立ち上げ方を100ページほどの資料として持っていたりするほどです。そうした資料を使いながら、新しく入った新卒の方でもパートナーセールスを教育できる仕組みになっているため、パートナービジネスを伸ばしていけるのだと思います。サイボウズさんは、OEMや業務提携をうまく展開してきており、例えばリコーさんがサイボウズさんのサービスを積極的に売るという体制が会社全体で出来上がっています。そこまで到達できれば、パートナーセールスとして成功と言えるのではないかと思い、この2社を挙げさせていただきました。

● 最近のパートナーセールスのトレンドは?

葛西:
「昔はこういうパートナーセールスが主流だったが、最近はこのような方法が来ている、など、何か感じるところがあればぜひ教えてください」というご質問です。

向髙:
逆説的ですが、僕は「トレンドはあまりない」と感じています。2年ほど前に、PRMという領域が出てきました。パートナーサクセスさんやPartnerProp(パートナープロップ)さんなどです。もちろん、言っていることはその通りだと思うのですが、型通りでは絶対にうまくいかないとも思っています。結局やるべきことは、各拠点を回ること、認知を広げるためのルート営業をすること、部長クラスを押さえること。これらをやらなければ、結局成果には繋がりません。ある意味、昔から取り組み方は変わっておらず、成功するためのプロセスはすでにかなり決まっていると感じています。逆に言えば、それをやりきれた会社がパートナーセールスで成功できる。「効率化させよう」という発想が最初に来ると、失敗のもとになります。パートナーセールスをやるのであれば、そうした地道な活動が必須になることを前提に取り組む必要がある、というのが僕の見解です。ですから、正直なところトレンドはないのではないか、という感覚です。

葛西:
ありがとうございます。確かに、言うほどトレンドのようなものはないですね。強いて言えば、コロナ禍でクラウドサインさんが大きく売れたような、マーケットが大きく変わる時には潮流がありますが、そのくらいですよね。

向髙:
確かに、そうですね。

● パートナーセールス人材の現在・今後の市場価値は?

向髙:
市場価値は大きく上がっていくと思っています。なぜなら、先ほどご説明した通り、パートナーセールスの仕事は本来、代理店営業だけではなく、会社のことをすべて知らなければなりませんし、その仕組み自体もすべて理解しなければ、本当の意味では成功しないからです。これを全部わかっている人は、正直なところ、セールス人材の中でもあまりいません。セールスに特化している方はもちろん素晴らしいのですが、パートナーセールスは、代理店とユーザーと自社の3者でコミュニケーションする場面が非常に多くなります。これをマネージできる人は実はあまりいないのです。利害関係も軸も異なるステークホルダーを動かしていくスキルセットが身につきますので、これはパートナーセールスに限らず、社内をはじめ、さまざまな仕事で活用できる場面が非常に多いと思います。パートナーセールスという人材としての市場価値はもちろん上がると思いますし、そうした巻き込み方や、3者をうまく動かして売上を上げていく経験は、いろいろな仕事・状況で活かせます。パートナーセールスとしての市場価値だけでなく、ビジネスパーソンとしての価値が上がっていくのではないか、というのが個人的な見解です。

葛西:
ありがとうございます。お時間が来てしまいましたので、Q&Aセッションはこれで終了とさせていただきます。お答えできなかった質問を書いていただいた方は、ぜひ交流会で向髙さんに直接聞いてみてください。向髙さん、本日はありがとうございました。

最後に

「大手代理店が動かない」原因は、代理店側だけでなくメーカー側の設計にもある——社内の協力体制、代理店ごとの攻略の型、そしてエンドユーザーの認知づくり。この3つが連動して初めてパートナーセールスは機能する、という向髙さんのメッセージは、0→1フェーズの実務者にとって明日から使えるチェックリストになったのではないでしょうか。

勉強会後の交流会でも、参加者の皆さんと向髙さんの間で活発な情報交換が行われました。会場をご提供いただいたリーディングマーク様、ありがとうございました。

参加者の皆さんとの集合写真

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