パートナーセールス研究会の葛西(@kasai_201406)です。
今週はパートナービジネスにおける「自然消滅」、いわゆる幽霊パートナーとなってしまったりパートナーが突然売らなくなってしまった際に起こっている変化・兆候について書かせていただきます。
パートナーは「解約」せずに“消える” 〜パートナービジネス特有の静かな離脱〜
パートナービジネスにおいて本当に怖いのは、パートナー契約の「解約」ではありません。
※パートナー契約が自動更新になっておらず、一定の販売実績に届かなかった場合は解約になるという契約内容になっているケースもありますので、その場合はパートナー契約の解約も頻繁に起こり得ます。
多くのパートナーは、「辞めます」とも言わずに、静かに「売らなくなる」からです。
月次の売上レポートを見ると、
- 先月より少し受注数や商談件数が減った
- 今月はまだ案件が出ていない
そんな小さな変化が続き、気づいたときには・・・
半年以上、1件も案件紹介がない状態になっている。
しかし担当者に連絡すると、
- 特に不満はないですよ
- タイミングがあえば、また提案しますよ
と、関係性自体は続いているように見える。
これが、パートナービジネス特有の「自然消滅」です。
直販であれば、成果が出なければクレームが入り、最終的には解約という「明確なサイン」が現れます。
一方、パートナーはメーカーに依存しているわけではありません。だからこそ、わざわざ不満を伝える理由がないのです。
- 売りづらければ、提案しなければいい
- 優先度が下がれば、後回しにすればいい
- 他に売れる商材があれば、そちらを売ればいい
その結果、メーカー側から見ると「いつの間にか売られなくなっている」という現象が起きます。
そして厄介なのは、売上がゼロになった“結果”を見てからでは、もう遅いという点です。
売らなくなる兆候は、実はずっと前から出ています。
ただそれが「解約」や「クレーム」のように分かりやすく表に出てこないことが多いため、メーカー側のパートナーセールス担当が異変として認識できていないだけなのです。
では、パートナーはどの瞬間に「もうこの商材は売らなくていい」と判断しているのか。
次の章から、その具体的な瞬間を分解していきます。
パートナーが売らなくなる瞬間①「売れる実感」がなくなったとき
パートナーが商材を売らなくなる最初の分岐点は、「売上が立たなかったとき」ではありません。
もっと手前にあるのが、「売れる実感が持てなくなった瞬間」です。
たとえば、こんな状態に心当たりはないでしょうか。
- 初回提案から受注までが異常に長い
- 提案しても検討止まりで終わることが多い
- 「これ、どうやったら売れるんだっけ?」が説明できない
この段階では、パートナーはまだ不満を言いません。
なぜなら「自分の売り方が悪いのかもしれない」と考えるからです。
しかし、“提案 → 手応えなし”という体験が何度か続くと、無意識の判断が下されます。
「この商材、決まりにくいな」
この一言が、非常に重要です。
パートナーにとって商材は「在庫」ではありません。
限られた営業リソースを、どこに使うかの選択肢です。
- 同じ1時間で決まりやすい商材
- 過去に成功体験がある商材
- 上司や会社から評価されやすい商材
これらと比較されたとき、「決まりにくい」という印象がついた商材は、何も言われなくても優先順位が下がります。
ここで重要なのは、売上がゼロでも「まだチャンスはある」とメーカー側が思っている一方で、パートナー側ではすでに“試すフェーズは終わった”と判断されているケースが多いことです。
特に注意すべきなのは、「提案はしてくれているが、受注しない状態」が続いているとき。
これは前向きな兆候ではなく、売らなくなる直前の“最後の惰性”であることも少なくありません。
売れる実感を失った商材は、明確に断られることもクレームが出ることもなく、ただ静かに「提案されない商材」になっていきます。
では、次に何が起きるのか。
次章では、売上や条件ではなく「感情」が原因で起きる変化について見ていきます。
パートナーが売らなくなる瞬間②メーカー⇔パートナーとの“心理的距離”が広がったとき
「売れる実感」が薄れ始めたあと、次に起きやすいのがメーカー⇔パートナーとの心理的距離が広がるという変化です。
ここで重要なのは、関係が悪化するわけではないという点です。
- 連絡をすれば、返事は返ってくる
- 打ち合わせをすれば、表面的には問題ない
- 特別なトラブルが起きているわけでもない
それでも、パートナーの行動は少しずつ変わっていきます。
たとえば、
- 問い合わせ、質問の頻度が減る
- 相談内容が浅くなる
- 「ちょっと確認します」が増える
- 案件の温度感を共有してくれなくなる
こうした変化は、売らなくなった“結果”ではなく、売らなくなる“途中経過”です。
多くの場合、そのきっかけは非常に些細です。
- パートナーセールス担当の問い合わせへのレスが以前より遅くなった
- パートナーセールス担当から回答はあるが、踏み込んだ支援がなくなった
- パートナーセールス担当が変わり、関係性がリセットされた
- パートナーセールス担当者が忙しそうで、気軽に相談しづらくなった
こうした体験が積み重なると、パートナーの中に次の判断が生まれます。
「この商材、あまり頼らなくてもいいか」
パートナーが商材を売るかどうかは、条件や報酬だけでなく「安心して頼れるかどうか」に大きく左右されます。
- 困ったときにすぐ相談できる
- 一緒に考えてくれる
- 自分たちの状況を理解してくれている
この感覚がある商材は、多少売りづらくても「もう一回出してみよう」となります。
逆に言えば、心理的な距離が生まれた瞬間、その商材は後回しにされるのです。
ここで厄介なのは、メーカー側が「特に問題は起きていない」と認識してしまう点です。
クレームもない。関係も切れていない。だから問題がないように見える。
しかしパートナー側では、すでに“積極的に売る対象”からは外れている。
このズレこそが、パートナービジネスにおける自然消滅を加速させます。
次章では、こうした個人の感情や関係性とは別に、パートナー組織の中で起きている構造的な変化について見ていきます。
パートナーが売らなくなる瞬間③パートナー社内で「優先順位が下がった」とき
パートナーが商材を売らなくなる最後の決定打は、「社内での優先順位が下がった瞬間」です。
ここまでの段階で、
- 売れる実感が薄れている
- メーカー⇔パートナーとの心理的距離が少し空いている
という状態が重なると、その商材はパートナー側の組織の中で、静かにこう位置づけられます。
「悪くはないけど、今は優先しなくていい商材」
この判断は、担当者個人の好き嫌いではありません。組織構造そのものが、そう判断させているケースがほとんどです。
たとえば、
- パートナーの社内KPIや評価指標と噛み合っていない
- 会社として注力する別の新商材が増えた
- 上司から「今月はこっちを売ってほしい」と言われた
- 既存顧客向けのアップセル商材が優先された
こうした環境変化が起きると、営業担当者は「何を売るか」を自分で選べなくなります。
そしてこうなったとき、メーカー側に何の連絡も入らないことがほとんどです。
- 契約は続いている
- 問い合わせをすれば対応はしてくれる
- 関係性が悪化したわけではない
それでも、商材は“営業の選択肢”から外れていく。
特に注意すべきなのは、担当者の異動・退職が起きたタイミングです。
引き継ぎ資料に書かれない商材、「一度も売ったことがない商材」は、その時点でほぼリセットされます。
メーカーから見ると、「急に提案が止まった」「理由が分からない」という状態になりますが、パートナー社内ではすでに“存在していない商材”になっていることも少なくありません。
ここまで来ると、「売ってください」「キャンペーンがあります」といった働きかけは、ほとんど意味を持たなくなります。
なぜなら問題は、個人のモチベーションではなく、組織の優先順位そのものだからです。
では、この“自然消滅”を防ぐために、パートナーセールスは何を管理すべきなのか。最後の章では、売上が落ちてから動くのではなく、兆候の段階で手を打つ考え方について整理します。
自然消滅を防ぐために、パートナーセールスが本当に管理すべきこと 〜売上管理から「兆候管理」へ〜
ここまで見てきたように、パートナーが売らなくなるプロセスは、次の順番で静かに進みます。
- 売れる実感がなくなる
- メーカー⇔パートナーとの心理的距離が広がる
- 社内での優先順位が下がる
重要なのは、このどれもが「売上がゼロになってから」起きているわけではないという点です。
むしろ多くの場合、売上が落ちる前から兆候は出ています。それにもかかわらず、パートナービジネスでは次のような管理が行われがちです。
- 売上が出ているか
- 商談数があるか
- 今月の数字はどうか
もちろんこれらは重要です。しかし、それだけを見ていると自然消滅は防げません。なぜなら、売上がゼロになった時点では、すでにパートナーの中で「売らない判断」が終わっているからです。
では、パートナーセールスは何を管理すべきなのか。
それは売上ではなく「兆候」です。
たとえば、
- 提案頻度が落ちていないか
- 問い合わせや質問の数が減っていないか
- コミュニケーションの総数が減っていないか
- 案件相談が「報告型」になっていないか
- パートナー向けのスプレッドシートの閲覧数やポータルサイトの閲覧数が減っていないか
こうした変化は数値では見えにくい一方で、売らなくなる直前に必ず現れます。そして対応も、「もっと売ってください」では意味がありません。
必要なのは、
- どうすれば“売れるイメージ”を持てるか
- どこでつまずいているのか
- 今、社内で何が優先されているのか
をしっかりと現場情報をヒアリングの上で整理し、パートナーの営業活動に再び入り込むことです。
パートナーは、放っておけば自然に売らなくなります。それは怠慢でも裏切りでもありません。限られたリソースの中で、合理的な判断をしているだけです。
だからこそ、パートナービジネスを伸ばす鍵は「売上を追いかけること」ではなく、売らなくなる前に気づき、手を打てるかどうかにあります。
自然消滅を防げるかどうかは、パートナーセールスが
“数字の管理者”で終わるのか、
“関係性と兆候のマネージャー”になれるのかで決まります。
上述のような兆候をしっかりとキャッチアップできるように、パートナーの企業単位のみではなく、パートナー企業の営業担当者単位での情報管理・数字/フェーズ管理を徹底しましょう!
どのように情報・数字・フェーズを可視化・管理するのかお悩みの方は、是非お気軽にご相談ください!
