セミナーレポート

【第1回PSラジオ】パートナー深耕期におけるあるある課題と解決策(2025/03/26開催)

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お時間ない方は、PSラジオの要約をご覧ください。

  • パートナーから顧客紹介が発生しない課題
    • 営業担当がサービスを理解していない、連携方法がわからないのが原因
    • ベンダー側がパートナー目線に立ったオペレーションや営業支援を用意すべき
    • パートナー側のオペレーションの把握やKGI/KPIの握りも細かく設定
    • コミュニケーション手段はパートナー側に合わせる
  • 紹介されても商談・成約につながらない課題
    • 初期は質より量、質の転換はパートナーの営業担当個人の単位で行う
    • ベンダー側が商談を巻き取り、成功体験を提供しながら育成していく
    • 情報は少しずつ小出しにし、育成のようにステップアップさせていく
  • 成約後、次の案件につながらない課題
    • 大手企業では支店や事業部ごとに“別会社”として対応すべき
    • 成功事例を他部署へ展開するための情報共有・社内マーケが重要
    • 信頼構築を重視し、レスポンスの速さ・丁寧さが差別化ポイント

※本編はここからです。

皆さん、こんばんは。

パートナーセールス研究会 発起人の葛西(@kasai_201406)です。

今週は、先週3/26(水)に開催させていただいた【第1回PSラジオ】のレポートを書かせていただきます。

PSラジオの企画背景

パートナーセールスの皆様に、ランチ時間帯に気軽にラジオ感覚でパートナーセールスのノウハウが聴ける機会を提供できればと考え、今回初の試みとして「PSラジオ(パートナーセールスラジオ)」という企画を開催させていただきました!

記念すべき第1回目は、パーソナリティはパートナーセールス研究会 発起人の私、葛西が、
そして初回ゲストはご存知の方も多いこの方、Grow UPの佐々木千穂さんに出演いただきましたー!

ゲスト

今回のテーマは、「パートナー契約後の深耕期のあるある課題」のお話をもとに、それぞれの課題に対する具体的な解決策を2人でディスカッション形式で語らせていただきました!

パネルディスカッション 〜深耕期のあるある課題を深堀り〜

テーマ①パートナー企業からの顧客紹介がなかなか発生しない

佐々木氏:
まず挙げられるのが、「パートナー企業からの顧客紹介がなかなか発生しない」という課題です。

よくある要因は、パートナー側の営業担当がサービス内容を理解していない、エンド顧客への説明が難しい、エンド顧客へは説明した後のベンダー側への連携方法がわからないといった点です。

ベンダー(メーカー側)がパートナー視点でオペレーションや資料、営業支援コンテンツを設計できていないということも多い要因かと思ってますが、葛西さんはどう思われますか?

葛西:
そうですね、パートナーの視点に合わせたオペレーションや営業コンテンツの用意は必須ですね。

特にオペレーション設計については、トップパートナーになるような大手パートナー企業ほど商材数が多いため、主力商材の商談をどう進めているのか、受注後の計上フローなどのオペレーションの詳細まで把握するようにしています。

佐々木氏:
おっしゃる通りで、売れているベンダーは顧客の紹介の流れやターゲットリストのすり合わせ、どの情報を取得しているかなど細かく確認しています。

また、目標設定についても、パートナー企業の商材や目標、組織構造に合わせた「握り」が重要です。

自社目線ではなく、パートナー企業と一緒に目標を握っていく必要があります。

葛西:
KGI・KPIの握りは当然ながら必要ですね。

加えて、オペレーション面という観点では、例えば営業数字の計上基準が会社によって異なるため、社内計上が申込ベース(発生ベース)なのか・入金ベースなのかも確認しています。

佐々木氏:
その通りですね。

例えば3月末決算の企業では、計上タイミングが極めて重要で、これを把握していないと致命的です。

また、個人の営業担当がどのような目標を背負っているのか社内会議のタイミングはいつかどのような情報を求めているかまで理解することが必要です。

葛西:
あとは、基本的には、全てパートナー企業側に合わせるというスタンスで動くことが重要です。

アカウントプランも決算月に合わせて作り、使っているチャットツールもパートナーに合わせています。

例えば、パートナー側がChatworkを使っていれば、Chatwork上に相談チャンネルを作ってもらい、そのチャンネルに営業全員を入れてもらい、営業全員とつながれるようにします。

佐々木氏:
そうですね、自社がslack使っているからという理由でslackを無理に使わせようとすると非常に嫌がられます。

コミュニケーション手段を合わせることは特に重要ですね。

テーマ②顧客を紹介いただいても商談、成約につながらない

佐々木氏:
テーマ2は「紹介されても商談成約につながらない」です。これもあるあるだと思います。

最初のご紹介案件は、内容が緩めであることが多いです。

しかし、パートナー企業が顧客を紹介してくれたこと自体が素晴らしいことで、そこから軌道修正していく必要があります。

初期段階では、商談の質よりも「紹介が発生すること自体を評価すべき」です。

葛西:
おっしゃる通りですね。

最初から質の高い商談がくることを期待するのは、夢物語です。直販でも最初は「量→質」へと転換しますよね?パートナービジネスも同じです。

まずは商談の「量」を確保し、たくさん紹介をくれる営業担当者から質への転換を図っていくことが重要です。

佐々木氏:
そうですよね。企業単位ではなく、担当者単位でアプローチするのが大切です。

また、パートナーの営業担当の方にとって、自分の商材じゃないものを営業するのは難しいんです。新しい商材をインプットしてお客様に提案するのは、ハードルが高い。

ですので、ベンダー側が巻き取って一緒に商談同席したり、成功体験を積ませてあげるのが特に大切だと思います。

葛西:
その通りです。特に最初は、シンプルに伝えることが大切です。

皆さん各社が扱っているSaaS商材もできること・実装されている機能が1つってことはないと思います。そのため、いろいろな機能や解決できるソリューションをパートナーの営業担当の方々に伝えたくなる気持ちも分かりますが、極めてわかりやすい基準を1つ設けるくらいでちょうど良いです。

例えばですが、「年間採用人数10名以上ならパスをください」というような、シンプルで分かりやすい基準です。

そこから徐々に、パートナー企業の各営業担当ごとの理解度に応じて肉付けしていきます。

佐々木氏:
大量の情報を最初から渡してしまうと、パートナー側が消化しきれなくなってしまいます。ベンダーはパートナーにとっては「One of them」な存在でしかないので、段階的に情報を渡していくことが大切です。

感覚としては、まさに“育成”に近いと思います。

葛西:
本当にそうですよね。自社のメンバーではない、第三者であるパートナーの営業担当をマネジメントするという観点では通常のマネジメントよりも難易度が高いですが、そこがパートナーセールスの腕の見せ所であり、面白みの1つだと思っています。

佐々木氏:
信頼されているかどうかの目安として、

  • 異動の連絡が来る
  • 転職や結婚の相談が来る

などの“裏KPI”も活用していました。個別に相談を受ける関係性になっていれば、一定以上の信頼を得られているという判断材料にもしていました。

葛西:
裏KPI、私も追ってました。ご飯に誘われる回数や飲みに誘われる回数など、信頼関係の深さを見る指標として活用できますよね。

昨年11月に実施させていただいたアドベントカレンダーでも、カオナビ高岡さんのnoteで裏KPIについて少し書いてましたけど、あれは非常に共感できましたね(笑)

佐々木氏:
こういった動きは、エンタープライズセールスと非常に似ていますよね。社内の複数人を巻き込みながら関係を構築していくプロセスは共通していると思います。

テーマ③顧客紹介、成約となっても次に続く顧客紹介(案件)が発生しない

佐々木氏:
次は、「成約しても次に続かない」「継続的に案件が出てこない」という課題です。

大手パートナー企業の場合、支店や事業部ごとに“別会社”のようなものと捉える必要があります。つまり、事例を作っても自然に横展開はされません。能動的に展開していく必要があります。

葛西:
おっしゃる通りですね。

皆さんも契約されているような大手どころの販売会社さんなどは、拠点ごとに営業方針や文化が全く異なります。

なので、成功事例を1つの拠点で作ったら、こちらから積極的に他拠点へ展開していくべきです。

佐々木氏:
成功事例の「事例化」も重要ですが、それに限らず、「こんな一言を顧客に言ってもらえた」など、あらゆる実績や事例、小さなお声をエビデンスにして共有することが大事です。

また、営業担当者同士の紹介も効果的。類は友を呼ぶ、優秀な人の周囲には優秀な人がいるので、そこをうまく活用することもおすすめです。

葛西:
そうですね、優秀な人の周囲には確かに優秀な人がいますね。

そして最終的には、やはり「信頼」をいかに構築するかが重要です。

売上は後からついてくるもので、まずはパートナー企業の課題に真正面から向き合うことが先です。自社商材を無理に売り込もうとするのではなく、相手の課題に寄り添って解決策を提供する姿勢が、結果として売上につながります。

佐々木氏:
相手に寄り添うこと、これが1番重要ですね。

あとは、「レスポンスの速さ」も信頼を獲得する鍵です。その日のうちにお礼メールを出す、テンプレを用意してすぐ送れるようにしておくなど、スピードで差別化できます。

即レスは誰にでもできる“勝てるポイント”なので、ぜひ意識していただければと思います。

葛西:
私もよく使うお礼メール文や返答文は全てテンプレを用意しています。

例えばMacならClippy、WindowsならCliborを使って、よく使うお礼メールは一文変えるだけで即送れるようにしています。
※Cripy・Cliborについては、下記を参照ください。

【Q&A】

Q1. パートナー企業に自社商材の売上目標を握ってもらうには、どういうストーリーで話をされていますか?

佐々木氏:
私の場合、大手企業だと中期経営計画などの公開情報をもとに、パートナー企業がどんな目標を掲げているかを逆算して整理します。

そのうえで、「御社のリソース(人・時間)を使って商材を担っていただく以上、しっかりビジネスとして結果を出しましょう」と、けっこうストレートにお伝えしています。

また、「この商材が本当に御社に合うのかを判断する材料にもなるので、ぜひ目標設定して一緒に検証していきましょう」という言い方もしていますね。

葛西:
最初から目標を握れる場合とそうでない場合があると思っていて、特に大手パートナー企業の場合は佐々木さんが仰るように中期経営計画や決算資料からそのパートナー企業の目標や事業戦略を読み解くようにしています。

さらに、その会社のビジネスモデルやバリューチェーンを把握することでキャッシュポイントや組織体制が見えてくるので、その上で「このポイントで自社商材が価値を出せる」「パートナーに手数料以外に、このポイントでメリットを提供できる」というストーリーを描きます。

ただ、このストーリー、大きな絵を描くことって非常に難易度の高い業務なんですよね。事業開発の要素が多分に必要となります。

ですので、ご自身で考えるのも大事ですが、自分のみでは限界であることもあると思うので、上司などをうまく使ってその知恵も借りて考えると良いでしょう。

Q2. ターゲットリストをスムーズに提出してもらうための運用工夫について

佐々木氏:
これはあるあるなのですが、いきなり「ターゲットリストください」とか「ターゲット企業渡すのでアプローチできるところを教えてください」と言うと、パートナーさん側から結構嫌がられるんですよね(笑)

なので、100社単位とかで一気に渡すのではなく、例えば「この30社についてどう思いますか?」と小分けで渡すのがおすすめです。その際、業種・エリア・規模などをヒアリングしてからリスト化して提示するのがポイントです。

その中で、「実はこの2社は取引あります」といった反応をもらえたら、「ちなみに他にどんな企業を担当されていますか?」と自然な流れで引き出していきます。こうして一緒に作り上げていく形がベストですね。

葛西:
まさにそうですね。ターゲットリストをまとめて一気に出しても「めんどくさい」と感じられてしまうことが多いので、30件ずつくらいで出して様子を見るのがベターです。

また、パートナー側の既存顧客リストを獲得したい場合、「貴社が提案しやすいように、取引先への提案の◯・×を付けてお返しさせてください」という伝え方も有効です。もちろんこのように伝えても断られる時は断られますが。

要するに「貴社のために作ってます」と見せると、少し柔らかく受け取ってもらえることもあります。

さらに私がやっていたのは、インテントセールスツールを活用し、インテントデータを元に興味関心が高そうな企業をこちら側で抽出して、週次や月次でパートナーに渡して既存取引先がないかという確認や新規であれば直接アプローチしていただいたりしていました

「この企業、最近採用関連の情報を見ているみたいですので、●●さんからアプローチしてもらませんか?」と提案ベースで出すと、動いてもらえるケースも増えます。

佐々木氏:
あとは、パートナー企業の中でも主管部(とりまとめ部署)にリストを渡して精査してもらう一方で、個別の営業担当に話を振るのも有効です。

担当者レベルだと、「あの企業、私が見てますよ」と話してくれることが多いので、実はそこから具体的なターゲットリストが自然と構成されていったりします。

第1回PSラジオの総括

当日ご参加いただいた皆様、およびこのPSラジオのウェビナーレポートをここまで読んでいただいた皆様、有り難うございました。

ランチ時間帯に、ラジオ感覚でパートナーセールスを学ぶ「PSラジオ」。

非常に多くの方にご参加いただけて、非常に好評のお声をいただいておりますので、第2回も開催させていただこうと考えております。

第2回は新たなゲストもお呼びして開催できたらと考えておりますので、第2回開催も皆様是非楽しみにしていてください!

パートナーセールスの伴走支援します!

大手SaaSでパートナーセールスに従事し、パートナーセールスをハンズオンでゼロから立ち上げました。

その過程で、300社以上が参加するパートナーセールス研究会を立ち上げ、多くの企業と成功事例を共有してきました。

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