パートナーセールス研究会 発起人の葛西です。
以前、「地方銀行・信用金庫アライアンス活性化のための基礎情報③」の記事にて、地域デジタル化支援促進事業の概要について触れましたが、ついに令和7年度(2025年度)事業の動きが本格化しました!
令和7年度事業の執行管理団体がPwCコンサルティング合同会社に決定し、令和8年1月29日より、地域金融機関(間接補助事業者)の公募が開始されています。
今回は、前回の記事の続編として、SaaS企業のパートナーセールス担当者が「今、地銀・信金に対して何をすべきか」という具体的なアクションに繋がる最新情報をまとめます。

この事業は、単なる「ビジネスマッチング」の枠を超え、銀行自体がコンサルティングフィーを得るビジネスモデルへの転換点です。この構造を理解しているかどうかで、貴社商材が銀行の注力商品になるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
1. 令和7年度 地域デジタル化支援促進事業の内容と特徴

まず、この事業の「構造」を正しく理解しましょう。これは、ITツールを売るための補助金ではなく、金融機関が伴走支援(コンサルティング)を行うための人件費に対する補助金です。
- 事業の目的: 地域金融機関等が、地域企業の経営課題を分析し、デジタル化による解決を伴走支援すること。
- 補助対象: 金融機関が企業から受領する「役務提供の対価(コンサルティングフィーなど)」。
- ※ITツールのライセンス費用や開発費は補助対象外です。あくまで「銀行員・信用金庫員またはグループのIT/DXコンサル会社等の社員が動いた人件費」が対象です。
- 補助金額:
- 補助率:役務提供対価(人件費分)の1/2
- 上限:1契約あたり100万円(金融機関1機関あたりの上限は4,000万円)。
- スケジュール:
- 公募期間:2026年1月29日~2月13日。
- 事業実施期間:交付決定日~2027年1月31日。
※より詳細な情報については、こちらの公募要領を参照ください。
💡パートナーセールスとしての視点
銀行側は「ツールを紹介して終わり(顧客の紹介)」ではなく、「課題抽出→プランニング→導入支援→定着化」までを行い、その対価として企業から報酬を貰う必要があります。つまり、「コンサルティング要素(役務)を付加しやすいSaaS」が、この事業においては圧倒的に有利になります。
例えば、運用代行のパートナー制度(運用パートナー・コンサルティングパートナーなど)を設けており、SaaSメーカー側から金融機関に対して具体的な運用方法のレクチャーや運用パートナーとしての認定制度の用意などがあるSaaS企業が好まれるでしょう(もしくは個別に用意して提案するのも可)。
2. 令和6年度事業からの変更点・ポイント

基本的なスキームは令和6年度を踏襲していますが、評価の視点や運用において、より「銀行側の主体性」が問われる内容となっています。
- 外部提携事業者(ベンダー)への丸投げ禁止の明確化
審査の視点として、「コミットメント(外部提携事業者との役割分担)」が必須項目となっています。「ITベンダー任せの役割分担になっていないか」が厳しく見られます。
→この事業の対象としようとする場合は、 「ベンダーが全部やります」という提案は、この事業においては銀行に響きません。 銀行員自身が手を動かせる(または一緒に汗をかける)範囲を明確にする必要があります。
- 経営課題起点(事業性評価)の徹底
単にツールを導入するだけでなく、「事業性評価等の経営課題の抽出を起点とする支援であること」が要件です。
→ 「便利になります」ではなく、「経営課題がどう解決し、生産性がどう上がるか」を銀行員が語れるロジックが必要です。
3. 令和6年度事業で採択された金融機関(ターゲット選定)

令和7年度の採択結果は3月上旬予定ですが、令和6年度に採択された金融機関はすでにこのモデルでの収益化におそらく意欲的であるため、社内体制も整いつつある「ホットなターゲット」です。
令和6年度は、69コンソーシアム(74地域金融機関)が採択されました。以下は主な採択機関の一部です。
| 地域 | 主な採択金融機関 |
|---|---|
| 北海道・東北 | 北海道銀行、北洋銀行、七十七銀行、青森銀行、みちのく銀行、岩手銀行、山形銀行、東邦銀行 など |
| 関東・甲信越 | 横浜銀行、常陽銀行、足利銀行、千葉銀行、第四北越銀行、八十二銀行、きらぼし銀行、京葉銀行 など |
| 東海・北陸 | 静岡銀行、大垣共立銀行、十六銀行、三十三銀行、北陸銀行、福井銀行、浜松磐田信用金庫 など |
| 近畿 | 京都銀行、滋賀銀行、池田泉州銀行、南都銀行、京都信用金庫、大阪シティ信用金庫 など |
| 中国・四国 | 広島銀行、中国銀行、伊予銀行、百十四銀行、山陰合同銀行、山口フィナンシャルグループ など |
| 九州・沖縄 | 福岡銀行、西日本シティ銀行、肥後銀行、鹿児島銀行、沖縄銀行 など |
💡具体的なアクション
貴社が提携している(または狙っている)銀行が上記に含まれている場合、すでに「デジタルコンサルティング部隊」や「専用の予算目標」が存在する可能性が高いです。
4. SaaS商材を活用した活動事例(ケーススタディ)
実際にどのような支援が行われ、銀行が収益(補助対象となる対価)を得ているのか。令和5年度の事例から、SaaS活用モデルを2つピックアップします。
① バックオフィス業務のクラウド化支援(三十三銀行 × kintone)

- 支援内容: 宿泊・飲食業の顧客に対し、紙で行っていた注文管理や業務日報をkintone(サイボウズ)でアプリ化。銀行側がヒアリングからデモアプリ作成、導入支援、マニュアル整備まで伴走。
- ここがポイント:
- プランニング(1ヶ月/26万円)+実行支援(3ヶ月)という契約形態。
- 銀行側がノーコードツール(kintone)の設定支援を行うことで、**「役務対価」**を発生させています。SaaSベンダー任せにせず、銀行側が手を動かしている好例です。
② 労務管理の内製化支援(いよぎんデジタルソリューションズ × freee)

- 支援内容: 宿泊業の顧客に対し、freee勤怠管理Plusを導入。複雑なシフト管理(約180種類)の整理や登録サポート、社労士との連携調整を銀行グループ会社が伴走支援。
- ここがポイント:
- 実行支援(6ヶ月/120万円)という大型契約。
- 単なるツール導入だけでなく、就業規則やシフトパターンの整理といった「業務整理(コンサル)」部分で価値を出しています。
その他の事例については、令和5年度 地域デジタル化支援促進事業 GUIDE BOOKよりご確認ください。
5. パートナーセールスとして「今」活動すべき内容まとめ

この事業は、銀行にとって「SaaSを売る」ことではなく「SaaS導入支援という役務で稼ぐ」ためのものです。この視点を持って、以下の項目を銀行側のアライアンス担当者にヒアリング・提案してください。
✅ ヒアリングすべき3つの項目
- 「今回の地域デジタル化支援促進事業には応募されていますか?」
- まずは、この事業への感度と参加意向を確認しましょう。
- まずは、この事業への感度と参加意向を確認しましょう。
- 「本事業の対象商材として、弊社のプロダクトを組み込む予定はありますか?」
- 銀行は、行員が支援しやすいよう「推奨ツール」を絞り込む傾向にあります。そこに選定されるかが勝負です。
- 銀行は、行員が支援しやすいよう「推奨ツール」を絞り込む傾向にあります。そこに選定されるかが勝負です。
- 「行員の方がコンサルフィー(役務対価)を取りやすいよう、導入支援メニューを一緒に作りませんか?」
- これが最も刺さる提案です。「初期設定代行」「業務フロー整理」「操作研修」など、銀行員が顧客に請求できるメニュー表(SaaSのライセンス費とは別の見積もり項目)を弊社から提供します、と持ちかけてください。
- これが最も刺さる提案です。「初期設定代行」「業務フロー整理」「操作研修」など、銀行員が顧客に請求できるメニュー表(SaaSのライセンス費とは別の見積もり項目)を弊社から提供します、と持ちかけてください。
🚀 提案の切り口(構成案の一例)
「御行がこの補助事業で収益を上げるために、弊社のSaaSを使った『デジタル化支援パック(プランニング+導入支援)』のテンプレートを用意しました。行員の方はこの手順書通りにヒアリングと設定支援を行うだけで、1社あたり◯◯万円の役務収益が見込めます。ベンダーへの丸投げではなく、御行の収益になるモデルです。」
⚠️ 注意点
この事業では「ベンダーへの丸投げ」はNGであり、補助対象外になるリスクがあります。 「弊社(ベンダー)が全部やります!」という提案ではなく、「御行が主役となって支援できるよう、黒子としてツールとノウハウを提供します」というスタンスが、この事業においては正解です。
また、本来であれば、内閣府の予算概要や本予算を通す前段階の概算要求の段階で、「この地域デジタル化支援促進事業が次年度も続きそうかどうか」という情報をしっかりと追い、次年度の地域デジタル化支援促進事業での支援対象とする商材ラインナップに入れてもらえるような交渉を早い段階からしておくのが本来鉄則です。
※採択された後から、地域デジタル化支援促進事業の対象とする商材ラインナップに加えていただくのはかなりハードルが高いため。
まとめ

地域金融機関は今、「金利で稼ぐ」モデルから「役務(コンサル)で稼ぐ」モデルへの脱皮を、国から強力に後押しされています。 この「地域デジタル化支援促進事業」は、まさにその起爆剤です。
パートナーセールスの皆様は、単にプロダクトを卸すだけでなく、「銀行がコンサルフィーを稼げる仕組み(導入支援の型化)」を提供することで、他社SaaSと圧倒的な差別化を図ることができます。
ぜひ、次回の定例会で担当者にぶつけてみてください。
