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SaaS企業が続々導入中!既存顧客からの紹介で広がる「リファラルパートナー制度」の全貌

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パートナーセールス研究会 発起人の葛西(@kasai_201406)です。

本日は自社サービスのユーザー企業(既存顧客)から顧客候補を紹介していただく、リファラルパートナー制度について書かせていただきます。

※一部、従来の紹介パートナー制度のことを“リファラルパートナー制度”と呼ぶメーカー企業もありますが、本記事では「リファラルパートナー制度=ユーザー企業(既存顧客)からの顧客紹介」という定義で書かせていただきます。

第1章:リファラルパートナー制度とは?SaaS企業で拡がる“顧客を巻き込む営業戦略”

「リファラルパートナー制度」とは、既存顧客が自社サービスを他の企業に紹介し、その成果に応じて報酬を得る仕組みのことです。SaaS企業ではこの制度を紹介代理店制度の一種として活用し、営業チャネルの強化に役立てています。

ポイントは、紹介者が“自社のサービスを使っている既存顧客”であること。高い満足度を持つ顧客が、自然な形でサービスを薦めることで、高品質かつ信頼性の高いリードが獲得できるのが特長です。

たとえば、ある高成長SaaS企業では、既存顧客とパートナー契約を結び、紹介活動をサポート。その顧客は「ユーザー兼営業パートナー」として活躍しており、制度化されたリファラルパートナー制度がビジネスの拡大に直結しています。

こうした広義の“リファラルパートナー制度”は、今後のSaaS営業の新常識として定着しつつあるのです。

第2章:なぜ今、SaaS企業がリファラルパートナー制度を重視するのか?

SaaS業界では近年、リファラルパートナー制度の導入が加速しています。その背景には、SaaS特有の営業・マーケティング課題が存在します。

まず第一に、SaaSビジネスでは契約単価が比較的低く、営業効率が問われやすいという構造的な特徴があります。大規模な営業組織を持たないスタートアップや成長企業にとって、限られたリソースで新規顧客を獲得するには、低コストかつ信頼性の高いリード獲得ルートが不可欠です。

そこで注目されるのが、既存顧客による紹介です。サービスに満足している顧客からの紹介は、営業トークでは伝えきれないリアルな使用感や信頼感を伴い、高い受注率が期待できます。

さらに、紹介制度はLTV(顧客生涯価値)の向上にも寄与します。顧客が紹介活動に関わることで、サービスとの関係性が深化し、解約率(チャーン)も下がる傾向があるからです。

こうした理由から、SaaS企業にとって「営業リソースの外部化」と「ロイヤルカスタマーのエンゲージメント向上」を同時に実現できるリファラルパートナー制度は極めて理にかなった仕組みだといえるでしょう。

第3章:成功事例に学ぶ!既存顧客を巻き込むパートナーモデルの実践

リファラルパートナー制度は、すでに多くのSaaS企業で導入され、成果を上げています。

実際に先日のパートナーセールス研究会のセミナーに登壇していただいたSales Marker社では、自社サービスに強い満足感を持っている顧客とパートナー契約を締結し、顧客はそのまま“紹介パートナー”となり、自身のネットワークを通じてサービスを紹介しています。この仕組みによって、質の高いリードの創出と信頼性の高い営業活動の両立が実現されているのです。

また、Sales Marker社では単なる紹介制度にとどまらず、「担当CSによる自社運用のフォローと他社紹介のフォロー」や「既存顧客向けのパートナー報酬制度」を明確に整備。既存顧客が安心して紹介活動を行える環境づくりに注力しています。

このような事例が示すのは、単に制度を設けるだけでなく、既存顧客の“営業的なポテンシャル”を引き出す設計と関係構築が成功の鍵だということです。

第4章:リファラルパートナー制度のメリットとデメリット

リファラルパートナー制度にはメリットもあれば、デメリットもあります。こちらではメリットとデメリットをまとめます。

メリット

  • 信頼性の高いリードが集まる
    → 顧客ネットワーク経由のため、受注率が高くなる傾向にあります
  • リード獲得ソースの拡張が可能
    → リード獲得ソースを拡張できるので、新規商談数の増加が期待できる
  • 既存顧客のLTVが向上しやすい
    → 既存顧客からの紹介によりエンゲージメントが上がり、チャーンレートが下がる

デメリット

  • 制度設計が難しい
    → 報酬設計については、「自社のサービス利用分を減額する」パターンと「成約報酬をお支払いする」パターン(通常の紹介代理店モデルと同じ)の2パターンがあります。既存顧客ごとに希望されるパターンが異なることも多いため、管理工数が肥大化するリスクがあります。
  • CS部門との調整が必要
    → 社内のCSの協力無くしては成り立ちません。そのため、社内のCSとの合意形成を取るまでのプロセスに工数がかかるケースも多いです。また、合意形成してスタートした後もCSとのコミュニケーションコストが一定かかったり、CS側とのさまざまな調整が出てきたりするといったケースも多いです。特に大手企業になればなるほど、CS部門の動きが鈍くなることが多いです。
  • ホリゾンタルSaaS向きで、バーティカルSaaSでは難しいことが多い
    → ホリゾンタルSaaSの場合はパートナーが自社導入するというケースもありますが、バーティカルSaaSだとパートナーが自社で導入するというケースがあまり出てきません(パートナーの属性によっては出てくるケースもありますが)。そのため、リファラルパートナー制度はホリゾンタルSaaS向けの施策と言えるでしょう。

第5章:リファラルパートナー制度を始めるには?ステップ別導入ガイド

1.経営陣やCS部門との調整

経営陣やCS部門との合意形成はもちろん、CS部門がどこまで対応するのかという役割分担、CSに既存顧客からの顧客紹介数をKPIとして持ってもらうか等の詳細まで明確に確定します。

2.ロイヤル顧客の抽出

NPSや顧客ヒアリングで、自社サービスに対する満足度の高い顧客(≒紹介意欲の高い顧客)を見極め、リスト化します。

3.制度と報酬の設計

以下のような対象条件やインセンティブ、契約形態を決定します。

  • 対象条件:新規のみ対象とするのか(過去契約して解約した先は対象とするのか)、紹介いただいた先が既に商談中であった場合は対象とするのか、等
  • インセンティブ:「自社のサービス利用分を減額する」または「成約報酬をお支払いする」のいずれにするか、成約時に「初年度のみのショット払い」にするか「継続した際の手数料(ストック型)」も払うのか、等
  • 契約形態:「紹介代理店契約」にするか「卸契約(再販)」にするか、等

4.営業支援ツールの整備

既存顧客の方が知人への紹介や営業活動がしやすいように、紹介ツール・トークスクリプト等の営業支援ツールを用意します。

5.トライアルでのスタートとフィードバックの仕組み作り

まずは小規模に、一部の超ロイヤルクライアント等で開始し、その効果を見ながら本格展開されていくと良いでしょう。また、ご紹介後の進捗状況やフィードバックなどが漏れないような体制構築もセットで必要です。

まとめ:リファラルパートナー制度はSaaS営業の次なる武器

リファラルパートナー制度は、パートナーセールスとカスタマーサクセスの枠を超えて、SaaS企業の成長を支える新たな営業戦略です。信頼性の高い顧客基盤を活かし、限られた営業リソースの中で成果を出すための有効な仕組みといえるでしょう。

パートナーセールスは、いかに「ファンを増やすか」という営業活動です。
ファンという観点では、自社サービスのヘビーユーザー(ロイヤルクライアント)になっていただいている方々は、まさに自社サービスまたは自社の「ファン」である方々なのです…!
この最も身近なファンの方々のお力をお借りしない手はないのではないでしょうか…??

適切な制度設計と導入プロセスを踏めば、顧客満足と売上拡大の好循環を実現できます。これからのSaaSビジネスにおいて、「顧客をパートナーにする」という発想は、競争優位の重要な鍵になるはずです。

特に、リソースや資金の限られるスタートアップのパートナービジネスにおいては必要不可欠で、足軽部隊的なスピード感を持って動けるスタートアップには打ってつけの施策であるかと考えています(もちろん、大手企業でもCS等の他部門を動かせるのであれば有効策です)。

リファラルパートナー制度を用意してないメーカー企業様は、是非新たにリファラルパートナー制度を用意してみてはいかがでしょうか。

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大手SaaSでパートナーセールスに従事し、パートナーセールスをハンズオンでゼロから立ち上げました。

その過程で、300社以上が参加するパートナーセールス研究会を立ち上げ、多くの企業と成功事例を共有してきました。

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