インタビュー記事

【インタビュー】事例活用からテックタッチ施策まで、ウイングアーク1st 中原氏が語るパートナー活性化術

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パートナーセールス研究会 発起人の葛西(@kasai_201406)です。

今回新しい取り組みとして、パートナーセールス研究会のメンバーにインタビューし、日々の実践や工夫を共有いただく企画をスタートしました。記念すべき第1回は、ウイングアーク1stで500社のパートナー活性化を担う中原さんにお答えいただきました!

インタビューを受けてくださったのはこんな人

ウイングアーク1st株式会社
営業本部 アライアンス統括部 PartnerDevelopment部 部長
中原 新平 氏

中原さんは2008年にウイングアーク1stに新卒入社して以来、パートナーセールスを中心にキャリアを積み重ね、現在はアライアンス統括部でパートナーデベロップメントを担当。パートナーのエンパワーメントとリレーション構築を両輪に、多彩な施策を展開されています。

パートナーとの「セールスコンテスト」による関係強化、全国規模でのパートナーマッチング、さらには若手を育成するブートキャンプやテックタッチの取り組みまで。今回はその裏側や実践の知見、そして「期待を超える」「楽しんでもらう」という日々の指針について、余すことなく語っていただきました。

主な業務内容について

現在の所属・ポジションと、主な業務内容について

葛西:
今回は、インタビューのお時間いただきありがとうございます!さっそくですが、現在の所属・ポジションと、主な業務内容を教えてください。

ウイングアーク1st 中原氏:
ウイングアーク1st 営業本部、アライアンス統括部、パートナーデベロップメント部に所属しております。主な業務内容は、一言で言うとパートナーの活性化です。

パートナーとの取り組みとしては大きく分けて2つをやっておりまして、パートナーさんのエンパワーメントと、パートナーさんとのリレーション構築=エンゲージメントで、詳しくは下記のとおりです。

  • エンパワーメント(力をつける支援)
    └資料やツールの充実
    └セミナーの企画・提供
    └パートナーが自律的に販売できる状態をつくる

  • エンゲージメント(関係性を深める活動)
    └パートナーマーケティングの推進
    └ウイングアークとパートナーの取り組みを外部に発信
    └エンドユーザーに見つけてもらいやすい環境づくり

葛西:
中原さんの役割的には、500社のうちのどれぐらいを見ていらっしゃるんですか?

ウイングアーク1st 中原氏:
全体のパートナー活性化に取り組むと同時に、重点的に約150社の活性化も担当しています。

パートナーセールスに関わるようになったきっかけ

葛西:
新卒でウイングアークに入られて、最初からパートナーセールスだったんですか?

ウイングアーク1st 中原氏:
そうですね。2008年に新卒で入社し、営業を10年以上続けています。ウイングアークはパートナービジネスが売上の8割を占める会社なので、営業は主にパートナーセールスを中心に行っています。

入社当初はパートナーセールスとダイレクトセールスの区別が明確ではなかったので、最初はどちらもやっていました。今までのキャリアでは、ダイレクトセールスとパートナーセールスが半々くらいです。

葛西:
なるほど。今はもう組織は完全にダイレクトとパートナーで分かれていらっしゃるんですよね。

ウイングアーク1st 中原氏:
はい、数年前からそれぞれ役割を明確にして運営しています。

葛西:
なるほど。組織もその時々の状況を鑑みながら、試行錯誤して分けたり統合したりを繰り返している感じなんですね。

ウイングアーク1st 中原氏:
そうですね。直近で組織を分けるようになったのは、新製品の立上げ・クラウドビジネス推進が理由です。オンプレミスとクラウドの両方でビジネスを展開する中で、クラウドを立ち上げるには、パートナーの属性を見直したり、既存パートナーに新しい販売方法を伝えたりする必要がありました。

そのため、自社でノウハウを蓄積し、事例やコンテンツを直接作るために、ダイレクトセールスを強化しました。これが、組織を分けるようになった主な背景です。

パートナーセールスの取り組み・特徴

担当されているパートナーの業種や従業員規模など、属性について

葛西:
担当されているパートナーの業種、従業員規模、属性などに特徴があればぜひ教えてください。

ウイングアーク1st 中原氏:
ウイングアークのプロダクトは大手企業を中心に多く採用されており、それに伴いパートナーもSIerやソフトハウス、開発会社が中心です。大手SIerから10数名規模のソフトハウスまで、幅広い企業がパートナーとして参画しています。

また、ウイングアークの強みとしては、500社以上のパートナー網に加え、全国各地、北海道から沖縄まで全都道府県にパートナーさんがいらっしゃるというところが挙げられます。

パートナーセールスの活動で、うまくいった施策について

葛西:
パートナーセールスとしての活動において、うまくいった施策があれば教えてください。

ウイングアーク1st 中原氏: 
大手SIerさんとの施策ですね。そのパートナーさんとは20年以上の付き合いでした。専属の人員も20〜30人ほど抱えていただいていて、自走体制は整っていたのですが、その分、私たちから直接状況が見えにくいという課題がありました。

そこで企画したのがセールスコンテストです。

  • セールスコンテストの仕組み
    └新製品の認知拡大を狙い、その製品を販売・案件登録した人に点数を付与。
    └営業職・技術職の両軸で設定し、公平に評価。
    └得点が高い人を表彰。

  • 表彰式の工夫
    └パートナーの担当者と上司をウイングアーク本社に招待。
    └成功案件を1枚のスライドにまとめ、プレゼン大会形式で共有。
    └ウイングアークの社長やパートナーの役員も出席し、直接感謝を伝える場に。

目的は単なる販売強化ではなくリレーション強化でした。結果的に現場担当者とのエンゲージメントが上がり、彼らの工夫や売り方の情報を把握でき、それを社内のセールスキットに活用できました。

施策としてシンプルですが、効果は大きかったと思っています。そのパートナーさんとの関係では初めての取り組みでしたが、長年の協業先でも、新規パートナーでも有効な施策だと思っています。現場の人たちのモチベーションも、表彰式を通じて大きく高まりました。

施策が軌道に乗るまでの課題について

葛西:
「セールスコンテスト」の施策が軌道に乗るまでに、どんな課題があったのか教えてください

ウイングアーク1st 中原氏:
最初は「実施できるか否か」の調整が最大の課題でした。例えば還元はAmazonギフト券にしたのですが、それが給与扱いになるのかどうか、どの部署に確認すればいいのかなど、先方社内での調整に時間がかかりました。

葛西:
なるほど。金額が大きすぎると大きすぎるでNGが入ったりとかもありますよね。会社側が許す範囲の金額感と、個人が動くであろう金額感のバランスを整えるのも大変そうです。

ウイングアーク1st 中原氏:
そうですね。 施策をどう社内に浸透させるかも難しかったです。既存のつながりだけでなく新しい人の巻き込みが重要でした。インセンティブの効果も人によって異なるため、丁寧な説得と周知が必要でした。

課題をどう乗り越えたか、工夫した点について

葛西:
セールスコンテストをやった時に、そのパートナーさんの社内の中でどういう風に具体的に浸透させていったのか、具体的なノウハウも教えていただきたいなと思います。

ウイングアーク1st 中原氏:
浸透の工夫は大きく2つありました。

  • 勉強会をセットにする
    └毎週のように勉強会を実施
    └新製品紹介と同時にコンテストの案内も実施
    └製品認知の場を入り口にして施策を伝える逆転のやり方

  • 個別の声がけ
    └引き合いをくれた人には必ず「今コンテストをやっているので申し込んでください」と一件ずつ丁寧に案内

この両輪で参加を広げていきました。

最終的に40〜50件ほどが施策に乗り、全体の半分程度の案件がコンテスト経由で動きました。点数付与は1点(商談化)、3点(案件登録)、5点(受注)といった段階的な形式で運用していました。

パートナーセールスとして大事にしている事

葛西:
パートナーセールスとして「これは大事にしている」という考え方や、行動指針があれば教えてください。

ウイングアーク1st 中原氏:
パートナーセールスとして大事にしていることは2つあります。1つは期待を超える」こと、もう1つは楽しんでもらう」ことです。

  • 期待を超える
    └若手時代:質問への即レスなどスピードで勝負
    └ベテラン時代:提案内容や情報提供で信頼を獲得
  • 楽しんでもらう
    └「仕事が楽しい」「この会社が好き」と思ってもらうことを重視

葛西:
なるほど。それこそ若手の頃を振り返ると、スピードが一番対応できるポイントかなと思いますが、それ以外にも若手のパートナーセールスの人たちに向けて、勝負できるポイントがあったらぜひ教えて欲しいです。

ウイングアーク1st 中原氏:
プロダクトへの愛です。たとえ説明が下手でも、「この人は楽しそうに話すな」と感じてもらえれば、製品をよく理解しているという信頼につながります。

私たちの相手の方はエンジニアや技術者の方々がキーマンのケースが多いので、その方と営業が対等にコミュニケーションする。ウイングアークの営業1人で、パートナーさんのエンジニア10数人に囲まれるみたいなのが日常茶飯事なんですね。それをどれだけ乗り越えるかが重要です。

葛西:
エンジニアの人たちと同じ土俵で会話するところまで到達するには、どういうことをインストール、勉強されていくのか率直に気になりました。

ウイングアーク1st 中原氏:
ここはね、苦労してるんですよ。以前はプロダクト数が少なかったので可能でしたが、今は増えたため、プリセールスと協力して専門的な部分を補っています。

葛西:
確かに、そうしないと会話が成り立たないですよね。相手を楽しませるためには、他に何かありますか?

ウイングアーク1st 中原氏:
自分の人柄をアピールすることです。私と仕事をするのは楽しい、と思ってもらうこと、そしてウイングアークという会社自体を好きになってもらうことが重要です。

「楽しんでもらう」であれば、若手でも汎用性があると思います。ウイングアークの担当営業の中原と仕事してたら楽しいプラス、ウイングアーク自体をいかに好きになってもらうか。この辺はパートナーセールスに限らず、普通の営業マンとしても大事な取り組みかなと思ってます。

パートナー様向けのイベントと施策について

パートナー会とイベントの取り組みについて教えてください

葛西:
パートナーさん向けのイベントについて、どういう取り組みをされているのか教えていただきけますか?

ウイングアーク1st 中原氏:
さっきの「楽しんでもらう」という考え方にもつながるんですが、ウイングアークはけっこうイベントドリブンな会社なんですよ。

全社で取組む年次のプライベートフォーラム「UpdataNOW(アップデータナウ)には、東京だけで1万人以上のお申込があります。国内ISVとしては最大規模で、グローバル大手に匹敵する人数を少ないコストで集められるのは、当社カルチャーの強みです。

葛西:
確かに1万人以上はすごいですね。

ウイングアーク1st 中原氏:
はい。ただ、今ウイングアークやIT業界全体の課題として「エンジニア不足」があります。営業が案件を取りたくてもSEをアサインできず、提案を見送ることが出てきている。特にSIer系では顕著です。

葛西:
ありますよね。エンジニア不足で案件取れないっていうのは、めちゃくちゃ聞きます。

ウイングアーク1st 中原氏:
なので、解決策として「販売パートナー」と「開発パートナー」を結びつける仕組みを進めています。これを私たちはパートナーマッチングと呼んでいます。今は全社戦略の一つとして進めていますが、もともとは地域営業の中で先行してやっていた取り組みなんです。

地域の営業では、案件をパートナーさんに渡しても「エンジニアが足りなくて提案できない」ということがよくありました。そこで別のパートナー同士を組み合わせて一緒に案件に取り組むようにしたんです。その延長で、2年前から地域限定でパートナー同士が出会えるマッチング会を始めました。

葛西:
パートナーさん側のニーズは、どうやってキャッチアップされていたんですか?

ウイングアーク1st 中原氏:
最初は営業がアンテナを張ってキャッチしていた形ですね。顕在的なニーズがあるというよりは、「人がいなくて提案できない」という声が現場で出始めたことがきっかけでした。今では年に1回アンケートも取っています。

葛西:
なるほど。ちなみにマッチングの実績はどのくらい出ているんですか?

ウイングアーク1st 中原氏:
正確に捕捉できていないのが課題ですが、仕組み化は進めていて、「WARP Scrum」というサービスをを用意しています。イベントだけでなく、システム上でもマッチングできるようにしています。

葛西:
イメージとしては、パートナーさんごとに登録して、お互いの課題や強みを入力してもらって、システム上でマッチングできるっていう仕組みなんですね。

ウイングアーク1st 中原氏:
はい。ただシステムだけでは難しくて、特に大手SIerと開発会社のように信頼関係が薄い場合、なかなか成約には至りません。だからリアルのイベントも組み合わせて「人と人の出会い」を作っています。

葛西:
なるほど。ある種、お見合いパーティーみたいな感じですね。

ウイングアーク1st 中原氏:
そうなんです。実際にイベントでは「お見合いパーティー方式」で5分ごとに自己紹介資料を持って席を回る、という仕掛けを用意したこともありました。その中から富士通Japanと第一コンピューターリソースが案件を獲得するなど、実績も出ています。

葛西:
なるほど。ちなみに、さっき出た「事例化する」という話(「共創」がSIerの未来を拓く──富士通Japan × 第一コンピュータリソース×ウイングアーク1stが語るDX時代の新モデル)ですが、事例作りはパートナーセールスが担っているのか、それとも営業の部門が手弁当で作っているのか、どちらで対応されているんですか?

ウイングアーク1st 中原氏:
今回の事例は私の部門が対応しましたが、ユーザー事例や販売事例など目的に応じて営業、当部門、マーケティング部と連携して実施しています。時にはMDF(マーケティング・デベロップメント・ファンド)を利用してパートナーに対応いただく場合もあります。

重点パートナー以外のパートナーに向けた、テックタッチの取り組みの経過について

ありがとうございます。もう1つお聞きしたいのが、以前伺っていたパートナーのアクティブ化施策で取り組んでいらっしゃった、「テックタッチでのアクティブ化施策」についてです。現在はどういう形で継続されているのか、実際にやってみてどんな効果が出ているのか、そのあたりをぜひ教えてください。

ウイングアーク1st 中原氏:
ありがとうございます。あの取り組みを発表したのは2023年で、今年でテックタッチの仕組みは4年目になります。施策は継続していて、当初は売上が伸びましたが、今は横ばいで安定。正直、デジタル施策は思ったほどレバレッジが効いていないのが現状ですね。

葛西:
なるほど。パートナー領域でのテックタッチは「大成功」という話はあまり聞かないのですが、実際に取り組んでみてハードルは高かったですか?

ウイングアーク1st 中原氏:
そうですね。どこをレバーにして関係構築するかが非常に難しいです。例えば「パートナーポータルに登録してログインさせる」という施策は、早々に挫折して切り替えました。ポータルに限らず、「ウイングアークとの関係性の中でデータがどう変化するか」を今も経過観測している状態です。

今、新しく取り組んでいるのは「能動的に売れる人をどう増やすか」という施策です。たまたま案件を提案してもらうだけではなく、より多くの人が自走できるようにしたい。その一環として「ブートキャンプ」という集中トレーニング施策を今期から始めています。

  • ブートキャンプ背景・目的
    └課題:能動的に売れる人をどう増やすか
    └ゴール:偶発的な提案に頼らず、多くの人が自走できるようにする

  • ブートキャンプ内容
    └形式:基本オンライン
    └目的:ウイングアークのBI製品を売れるようにする
    └構成:全4回(営業トーク含む)
    └目標:全回受講で一定レベルの営業活動が可能になる状態を目指す

  • 実施状況
    └初回:80人申込 → 60人参加
    └第2回:30人継続+新規30人 → 合計60人
    └途中参加も可能

  • 参加者の特徴
    └想定ターゲット:これから販売を増やしていきたいパートナー
    └実際の参加:全体から参加
    └内訳:上位パートナー7割、深耕中のパートナー3割
    └上位パートナーは若手営業が中心、1社20人申込のケースも

基本は若手が中心ですが、ベテランが受けて「改めて学び直せてよかった」という声もありました。まずは1巡やってみて、今後はPDCAをどう回すか考えようと思っています。次回以降は「聞くだけ」ではなく「ハンズオン」で実際に操作してもらう形式にしています。知識だけでなく、実際に触れることを重視しています。

葛西:
なるほど。1~2回目はインプット中心で、3回目以降は実践が入ってくる。4回終えた段階で「どれだけ売れるようになったか」をモニタリングして、次の施策を考えるという状況なんですね。

ウイングアーク1st 中原氏: はい、その通りです。

研究会メンバーに向けたメッセージ

葛西:
ありがとうございます。効果がどう出たのか私も気になるので、またぜひ教えてください。では最後に、パートナーセールス研究会のメンバーに向けて、中原さんからメッセージをお願いします。

ウイングアーク1st 中原氏:
私自身、パートナーセールスの経験は長いですが、多くを独学で学んできました。研究会のような場がもっと早くあれば良かったと思います。だからこそ、同じような思いをしないように、できる限りシェアしていきたい。まだ経験が浅くても失敗談こそがナレッジになるはずです。

ベテランの方もぜひインタビューを受けてほしいですね。話すことで自分の活動が整理されるので、すごく良い機会になりますので、ぜひ葛西さんとコミュニケーションを取っていただければと思います。

また、今後ウイングアークではPRM(Partner Relationship Management)のサービスを導入・活用していく予定です成功も失敗もこの研究会でシェアしていきたいと思ってますので、PRMを導入されている方は、ぜひ色々教えてください

葛西:
本日はありがとうございました。

最後に

今回はパートナーセールス研究会の企画で、株式会社ウイングアーク1stの中原さんに貴重なお話を伺うことができました。ご協力いただき、本当にありがとうございます。

この記事の内容が、皆さんの日々のパートナーセールス活動や事業の成長に少しでも役立てば嬉しいです。

また、パートナーセールスに携わる皆さんの経験や知見は、パートナーセールスについて悩んでいる仲間にとってとても貴重な情報になります。もしインタビューにご協力いただける方がいらっしゃれば、ぜひ葛西までご連絡ください。皆さんの取り組みや工夫を伺って、共有させていただければと思います。

パートナーセールスの伴走支援します!

大手SaaSでパートナーセールスに従事し、パートナーセールスをハンズオンでゼロから立ち上げました。

その過程で、300社以上が参加するパートナーセールス研究会を立ち上げ、多くの企業と成功事例を共有してきました。

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