こんばんは。
パートナーセールスの葛西です。
先々週・先週と2週にわたって、パートナービジネスにおける手数料設計ガイドを第1部・第2部を書かせていただきました。
今週はパートナー契約する際に締結する、パートナー契約書(代理店契約書)に記載すべき内容についてまとめさせていただきます。
なお、本noteでは一般的に契約書内に入れるような内容である、下記のような内容については触れません(ググったらいくらでも情報出てくるため)。
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手数料
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業務の委託内容
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報告義務
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契約解除の方法
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秘密保持
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反社会的勢力の排除
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支払規定
ググっても出てこないような、これは入れておいた方がいいよーというような項目にフォーカスを当てて書かせていただきます。
提案可能な顧客の定義
該当商材を既に導入されているユーザー企業へパートナーから提案をすることをNGとするのは当然ですが、パートナーから提案OK/NGとする顧客の定義(手数料支払いの対象外となるケースの定義)は明確にしておくことが重要です。
※反社会的勢力への提案NGなどの一般的なお話はここでは省きます。
例えば、下記のような企業群への提案OK/NGや手数料の支払い対象/対象外はしっかりと契約書内に記載しておくべきでしょう。
①直販や他パートナーから提案中の企業(既得権の有無)
自社の直販セールス部門や他パートナーから提案中の企業に対して、後から異なるパートナーが提案してもOKか、それともNGかは明確に契約書内に記載しておくべき事項です。
これは、業界用語でいう「既得権」というものです。
既得権を設定すると、既得権を確保したパートナーからしか一定期間はその商材の提案できなくなります。
この既得権を設定するか自由競争とするのかは、契約書作成時にしっかりと検討すべき事項であり、既得権を設定する場合は既得権を何ヶ月(または何年)に設定するかも記載すべき事項です。
※既得権については長くなってしまうため、別途こちらのnoteに書かせていただいております。
②過去ユーザーであり、現在はチャーンしている企業
過去その商材の契約があった過去ユーザーについてもパートナーからの提案をOKとするかNGとするか、明確に定めておいた方が良いでしょう。
自社の力だけでは過去ユーザーの再契約が難しい場合はパートナーの力を借りるというのもありですし、リードという観点では自社で持っているリードではあるためNGとするのもありです。
各ベンダーごとで、どこまで許容するか検討ください。
ただパートナービジネスは自社が儲かること以上にパートナーさんが儲かることを考えた方が良いかと思いますので、個人的にはパートナーさんが儲かるチャンスを阻害する項目は極力作らない方が良いかと考えています。
③パートナーの親会社や子会社、関連会社等
パートナー自身への導入はもちろんのこと、その親会社や子会社、関連会社等についても提案OKとするのかNGとするのかは契約書内に記載しておくべき事項です。
こちらも②と同様、自社の力だけではリード獲得や受注が難しい場合はパートナーの力を借りるというのもありですし、グループ・関連会社は関係性のある会社なのでNGとするという考え方もあります。
こちらも②と同様、個人的にはパートナーさんが儲かるチャンスを阻害することになるので極力作らない方が良いかと考えています。
キャンペーン実施の際の取り扱い
一定の期間限定でのパートナー向けの何かしらのキャンペーンを実施する可能性があることを記載しておくと、何かしらのキャンペーンを実施する際にスムーズです。
また、キャンペーンを実施する際は自社からパートナーに対して
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弊社からのメール等の書面又は電磁的記録によって通知をすることにより効力が生じる
という一文を入れておけば、別途覚書等を締結せずとも自社からパートナーへの「通知のみ」でキャンペーンが実施できます。
そのため、別途キャンペーンを定期的に打ちやすくしたり、覚書を別途締結する工数が削減できたりするためおすすめです。
※ただしパートナーが大企業である場合は、リーガルが非常に厳しいケースもあるため、ベンダー側からの一方的な通知だけではNGで別途覚書の締結が必須というパートナーもあったりします。
さらには、
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弊社はいつでもキャンペーンの内容を変更し、中止することができる
という一文も入れておくと、途中でキャンペーン内容を変更したりキャンペーン自体を止めたりする場合にも一方的な通知だけ済むため非常に工数が削減されます。
販売価格の割引時の取り扱い
パートナー経由の商談で販売価格を定価から割り引いて契約となった場合、パートナーへの手数料額がどうなるかも記載しておくべき事項です。
基本的にはパートナー側との同意の上で、販売価格を割引した分と同料率分だけ減額される旨を記載しておくと良いでしょう。
契約書内にこの記載がないと、都度覚書の締結やメールでのエビデンスの回収などが必要となり、余計な工数が発生します。
※なお、パートナー契約が卸モデル(再販)の場合は、この文言を入れることが難しいこともあります
競合避止
パートナーに商材を展開する際、パートナー側にそのプロダクトに関する様々なノウハウを奪われてパートナー側が競合となるサービスを開発してしまうというリスクも一定あります。
そのようなことを防ぐためにも、ベンダー側は競合避止の条項を入れておくべきでしょう。
例えば、下記のような文言です。
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本プロダクトについて、複製、改変、翻案、解析、分析、逆コンパイル、逆アセンブル、リバースエンジニアリングその他これらに類似する行為を行うことはできない。また、第三者を介してこれらを行わせることもできない。
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パートナー企業は、本契約が存続する間及び本契約の終了後●年間は、自ら又は第三者を介して本プロダクトと競合する事業を行ってはならない。
※場合によっては、「弊社に事前の書面による承諾を得ることなく」という一文を入れて、承認制という形に少し緩めても良い。
ただし、自社と競合するプロダクトの代理店販売を行うことを妨げるような文言までは入れない方が良いでしょう。
独占販売契約を締結する場合は入れた方が良い文言でありますが、独占販売契約ではない場合は競合プロダクトの販売まで制限してしまうとパートナー側から嫌悪されてしまうため、そこまで縛るのは避けましょう。
パートナー契約は自動更新に
パートナー契約はパートナー側からの契約解除の通知がない限り、自動更新にされることをおすすめします。
理由としては、自動更新にしないと毎年パートナー契約の更新手続きが発生してしまうためです。
※ただし、パートナーが大企業である場合はリーガルが非常に厳しいケースもあるため、毎年または半年ごとの契約更新手続きが必須となるケースもあります。
入れる文言の例は下記です。
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期間満了日の●ヶ月前までにいずれの当事者からの何らの意思表示がない場合、同じ条件でさらに●年間更新されるものとし、その後も同様とする。
契約書ではなく、申込書ベースに
代理店「契約書」から代理店「申込書」に変更するだけで契約における工数が大きく削減されます。
契約書締結ですと双方の押印が必要となりますが、申込書ベースにするとパートナー希望者側のみの押印で済むため、この往復のやり取りが減るだけでも非常に楽になります。
ただし、これもパートナーが大企業である場合はリーガルが非常に厳しいケースがあるため、契約書ベースではないとNGと言われることもあるでしょう。
また、自社の法務の方針にもよっても申込書ベースにできるかどうかは変わりますので、自社の法務に確認してみると良いでしょう。
まとめ
今回のnoteではパートナー契約書において、あまり一般的には語られていない重要な項目にフォーカスして解説しました。
提案可能な顧客の定義やキャンペーン時の取り扱い、販売価格の割引時の手数料処理、競合避止の条項など、パートナー契約をスムーズかつトラブルなく進めるために必要なポイントをお伝えしました。
これらの項目を事前に明確にしておくことで、後々のトラブルを防ぎ、パートナーシップをより強固にすることができます。
契約書の作成にあたっては、自社とパートナー双方の利益をしっかりと守りながら、ビジネスを円滑に進められるよう配慮することが重要です。
契約書の細部までしっかりと目を通し、必要な事項を盛り込むことで、長期的なパートナーシップの成功に繋がるでしょう。