パートナーセールス研究会 発起人の葛西(@kasai_201406)です。
ここ最近は対地方銀行・信用金庫アライアンスについて書いてきましたが、今週は「パートナーセールスの育成」という文脈で、パートナー企業さんとのコミュニケーションについて書かせていただこうと思います!
パートナーセールスにおけるコミュニケーションの難しさとは?
パートナーセールスで成果を上げるには、パートナー企業の営業担当との信頼構築がカギです。
しかし、パートナー企業の営業担当は自社の営業メンバーとは違い、直接的な指導や評価が難しく、「話が噛み合わない」「思うように動いてくれない」といった悩みがつきものです。
特に、パートナー企業の属性や営業担当ごとによって営業スタイルや価値観が大きく異なるため、「伝え方」や「接し方」に非常に工夫が求められます。ここで活用したいのが、行動パターンをもとに人を4タイプに区別する分析手法「DISC理論」です。
DiSCを使えば、相手の特性を理解し、そのタイプに応じた「ペーシング」を行うことで、円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築が可能になります。
DiSCとは何か?ビジネスにおける基本概念と4タイプ解説
DiSC(ディスク)理論は、人の行動特性を4つのタイプに分類する性格診断モデルで、ビジネスシーンでの人間関係構築に広く活用されています。

また、DiSCについてはDi(Dが強めで、次いでiも高いタイプ)、iD(iが強めで、次いでDも高いタイプ)、CS(Cが強めで、次いでSも高いタイプ)のような形で、2タイプの組み合わせもあります。
ですので、全12タイプに人の行動特性は分かれるというのが、このDiSC理論の特徴です。
この分類は、相手の「行動」や「話し方」、「反応の仕方」からおおよその傾向を読み取ることが可能です。特にパートナーセールスでは、パートナー企業の営業担当の各タイプに応じて、コミュニケーションの取り方を柔軟に変えることが信頼構築の近道となります。
なお、日本人はDタイプ:1割、i タイプ:2割、Sタイプ:4割、Cタイプ:3割と言われています。
「ペーシング」とは?タイプに合わせたコミュニケーションの合わせ方の基本

「ペーシング(Pacing)」とは、相手のペースや価値観に自分を合わせるコミュニケーション技術のことです。
心理学におけるラポール形成の基本として知られており、信頼関係の土台を築くために非常に有効な手法です。
ペーシングには以下のような要素があります:
- 話すスピードを合わせる
- 声のトーンや大きさを合わせる
- 言葉選びや表現のトーンを合わせる
- 相手の価値観や思考パターンに共感を示す
たとえば、Dタイプの営業マンに対してはテンポよく結論から話すことで「時間を大切にしている」と理解してもらいやすくなります。一方、Sタイプの営業マンに対しては、ゆっくりと落ち着いたトーンで丁寧に話すことで安心感を提供できます。
DiSC理論とペーシングを組み合わせることで、「タイプ別に最適な接し方」が明確になり、パートナー営業の関係性構築が飛躍的にスムーズになります。
ペーシングには、①ミラーリング、②チューニング、③マッチングの3種類があります。

①ミラーリング
相手と鏡のように「動作を合わせる」技術です。
下記がミラーリングの例です。
- お客様が前傾姿勢をとったら、自分も前傾姿勢
- お客様が頬に手をあてたら、自分も頬に手をあてる
- お客様が身振り手振りを付けて話したら、自分も身振り手振りを付けて話す
②チューニング
相手と「感情を合わせる」技術です。
下記がチューニングの例です。
- お客様が悩んだら、自分も悩む
- お客様が喜んだら、自分も喜ぶ
- お客様が悲しんだら、自分も悲しむ
- お客様が忙しそうなら、自分も忙しい気分で
③マッチング
相手と「言葉を合わせる」技術です。
下記がマッチングの例です。
- お客様が早口なら、自分も早口で
- お客様がゆっくり話すなら、自分もゆっくり
- お客様が代理店と言ったら、代理店。パートナーと言ったらパートナー。
パートナー先の営業担当のタイプを見極めたペーシング実践法
パートナー企業の営業担当がどのDiSCタイプに当てはまるかを観察し、その特性に応じたペーシングを行うことで、信頼感と成果は格段に高まります。以下にタイプ別のペーシング実践例を示します。
Dタイプ(主導型)への対応

- 論理的かつ簡潔に説明する
- 目標や期待を明確に伝える
- 過度な感情表現を避け、実績や結果を重視した話し方をする
iタイプ(感化型)への対応

- 親しみやすい言葉を使い、フレンドリーに接する
- 感情表現を交えながら話す
- アイデアや意見を積極的に受け入れ、自由な発想を尊重する
Sタイプ(安定型)への対応

- じっくりと話を聞き、共感を示す
- 安心感を与える接し方を心がける
- 直接的な指示よりも、丁寧な説明やサポートを重視する
Cタイプ(慎重型)への対応

- 客観的なデータや論理的な説明を用いる
- 感情的な表現や曖昧な説明は避ける
- 十分に考える時間を与え、質問には丁寧に答える
このように、相手のDiSCタイプを見抜いたうえで「ペーシング」することで、ただの営業トークでは得られない“共感と信頼”を生み出すことができます。
まとめ

パートナーセールスで成果を出すには、「相手に合わせたコミュニケーション」が不可欠です。
その鍵を握るのが、「DiSC理論」と「ペーシング」の考え方です。
DiSCを活用することで、パートナーの営業担当の性格や営業スタイルを読み解き、D・i・S・Cそれぞれのタイプに応じた接し方をとることが可能になります。
- Dタイプには結論から端的に
- iタイプには共感とストーリーを
- Sタイプには丁寧で安心感のある対応を
- Cタイプにはロジックと根拠を
これにペーシングを組み合わせることで、信頼感が醸成され、パートナーさん側から「嫌われない」という最低限の部分はクリアできるかと思います。
※もちろん「好かれる」ことが重要ですが、それ以前に「嫌われない」ということがパートナーセールスには特に重要です…!
このコミュニケーションのしやすさが担保できていないと、パートナーからの提案実施率や受注率が向上することはあまりないです。
また、今回はDiSCによるタイプを分けるという内容でしたが、DiSCに限らず社内に似たような属性を分けられるようなもの(例:MBTIなど)があれば、それを活用しても問題ありません。
「伝え方」ひとつで、パートナーセールスの未来は変えられる——。今日から実践できるDiSC活用術、ぜひ取り入れてみてください。