「パートナー契約はたくさん結んだのに、まったく売れない」
パートナービジネスに取り組む企業から、私が最もよく相談を受けるテーマです。パートナーセールス研究会でも、立ち上げ期のメーカー企業から同じ悩みが繰り返し寄せられます。
実はこの悩み、パートナー側の努力不足が原因であることはほとんどありません。多くの場合、つまずきの原因はメーカー側の「準備」にあります。
本記事では、これまで多くのパートナービジネスの現場を見てきた経験から、立ち上げを成功させるために欠かせない3つのポイントを解説します。
パートナービジネスを成功させる3つのポイント
- 「誰と組むか」を先に決める(パートナー選定)
- パートナーと、その先の顧客を深く知る
- パートナーが「売りたくなる理由」をつくり込む

ポイント1: 「誰と組むか」を先に決める(パートナー選定)
パートナービジネスの成否は、実は契約を結ぶ前の段階でかなりの部分が決まっています。それが「どのパートナーと組むか」の見極めです。
立ち上げ期にありがちなのが、「声をかけてくれた企業と片っ端から契約する」というパターンです。契約社数は増えるものの、稼働するパートナーはごく一部。残りは名ばかりの契約となり、管理コストだけが膨らんでいきます。
こうした事態を避けるには、営業活動でターゲット顧客を定義するのと同じように、「理想のパートナー像」を先に言語化しておくことが有効です。
理想のパートナー像を言語化する3つの問い
パートナー像を整理する際は、次の3つの問いに答えてみてください。
- どんな属性の企業か: 業種・事業モデル・顧客層(例: 特定業界に強いSIer、地場の販売会社、士業ネットワークなど)
- その企業は今、何に困っているか: 既存顧客の単価が頭打ち、商材ラインナップの陳腐化、新規開拓のリソース不足など
- 自社の商材は、その困りごとをどう解決できるか: パートナー視点で見たときの「組む理由」

この3点がつながって説明できるパートナー属性が、優先的に開拓すべきターゲットです。逆に、どれか1つでも埋まらない相手は、契約できたとしても稼働しない可能性が高いと考えたほうがよいでしょう。
立ち上げ期のKPIは「パートナー契約数」にしない
パートナー像を定めたら、あわせてKPIも設計します。ここで注意したいのが、立ち上げ期のKPIを「パートナー契約社数」に置かないことです。
パートナー契約数をKPIにすると、先ほどの「片っ端から契約」に逆戻りしてしまいます。立ち上げ期は「ターゲット像に合致するパートナーとの契約数」「初回商談の同席数」「パートナー経由の商談化数」など、質と稼働を測る指標を置くのがおすすめです。
ポイント2: パートナーと、その先の顧客を深く知る
組むべきパートナーが決まったら、次はパートナーへの理解を深めるフェーズです。
「契約したのに売ってくれない」と嘆くメーカーの話をよく聞くと、パートナーのビジネスモデルや評価制度、営業担当者の動き方をほとんど把握していないケースがほとんどです。
メーカー側にありがちな思い込み
- 契約さえ結べば、あとはパートナーが自走してくれるはずだ
- パートナーの数を増やせば、売上も比例して伸びるはずだ
- 手数料を高く設定すれば、積極的に売ってきてもらえるはずだ
- 立ち上げから半年もあれば成果が出るはずだ
パートナー経由の売上が軌道に乗るまでには、一般的に直販よりも長い時間がかかります。しかも、パートナーの営業担当者はあなたの会社の商材だけを売っているわけではありません。数ある取り扱い商材の中で「思い出してもらう」ところからのスタートです。
一方、パートナー側にはこんな本音がある
パートナーセールス研究会の場でパートナー側(代理店・販売会社)の方々から聞こえてくるのは、次のような声です。
- メーカーは自社の商品説明・販売してほしいという依頼ばかりで、こちらのビジネスを理解しようとしない
- 売っても利益がほとんど残らない設計になっている
- 商談に同席してほしいときに、メーカーの担当者がつかまらない
- 顧客に紹介できる状態の資料・提案書、提案サポート体制が用意されていない
- 自社にその商材の専門性がなく、顧客に質問されたら回答できるか不安であるため、怖くて提案できない
メーカー側の思い込みとパートナー側の本音。この2つのすれ違いこそが、「売ってくれない」問題の正体です。

すれ違いを解消する第一歩は、パートナーへのヒアリングです。「パートナー企業の事業目標・事業戦略は?」「どんな顧客に、どんな商材を、どんな体制で売っているのか」「営業担当者は何で評価されるのか」などを、契約前後のタイミングで必ず聞きましょう。パートナーの解像度が上がれば、その先にいる顧客の解像度も自然と上がっていきます。
ポイント3: パートナーが「売りたくなる理由」をつくり込む
最後のポイントは、パートナーが自社商材を積極的に売りたくなる理由、いわば「売る動機」の設計です。
パートナーの営業担当者は、複数の商材を抱えながら日々顧客と向き合っています。その中で自社商材を選んで提案してもらうには、「この商材を売ると自分たちと顧客にとって良いことがある」と明確に感じてもらう必要があります。
売る動機は、大きく3つの観点で整理できます。
観点1: 経済的なうまみがあるか
- 販売時の手数料だけでなく、導入支援・保守など継続的な収益機会があるか
- 既存顧客への追加提案(クロスセル)に使えるか
- 市場が伸びており、今後の売上拡大が見込めるか
観点2: パートナー自身の事業が強くなるか
- 既存の商材・サービスと組み合わせて、提案の幅が広がるか
- 競合他社との差別化材料になるか
- 新規顧客との接点をつくる「きっかけ商材(ドアノック商材)」になるか
観点3: 現場の営業担当者が売りやすいか
- 商材の特徴が一言で説明でき、顧客の反応がイメージしやすいか
- 販売後の手離れがよく、担当者の負担が少ないか
- 知名度があり、顧客への説明コストが低いか
- パートナー自身が自社で使っており、実感を持って語れるか

どの観点を重視するかはパートナーによって違う
重要なのは、3つの観点のどれを重視するかがパートナーの立場によって異なることです。
たとえば、自社の既存サービスと組み合わせて提案したいパートナーなら「事業が強くなるか」が最優先ですし、多数の商材を仕入れて販売網に流す立場のパートナーなら「経済的なうまみ」と「売りやすさ」が判断基準になります。
だからこそ、ポイント1のパートナー選定と、ポイント2の解像度向上が効いてきます。相手が何を求めているかがわかっていれば、刺さる動機を的確に設計できるからです。3つのポイントは独立したものではなく、順番につながっているのです。
まとめ: 3つのポイントは「選ぶ→知る→動機づける」の順で
最後に、本記事の内容をチェックリスト形式でまとめます。
ポイント1: パートナー選定
- 理想のパートナー像(属性・課題・組む理由)を言語化している
- 立ち上げ期のKPIが「契約数」だけになっていない
ポイント2: 解像度
- パートナーのビジネスモデル・評価制度をヒアリングしている
- パートナーの先にいる顧客像を説明できる
ポイント3: 売る動機
- 経済面・事業面・現場の売りやすさの3観点でメリットを整理している
- パートナーの立場ごとに、訴求するメリットを変えている
パートナービジネスは、立ち上げから成果までに時間がかかる長期戦です。だからこそ、最初に「誰と組むか」を見極め、相手を深く知り、売りたくなる理由を用意する。この3つを押さえておくことが、遠回りに見えて最短の道になります。
パートナーセールス研究会では、こうした立ち上げ期の悩みを実務者同士で相談し合える場を運営しています。ぜひお気軽にご参加ください。